FMEAの課題は「形骸化」と「過去の知見が入らない」こと
FMEAは、設計や工程で起こりうる故障モードを洗い出し、影響の大きさ(重要度)、起こりやすさ(発生度)、見つけやすさ(検出度)を評価して、対策の優先順位を決める手法です。設計FMEA(DFMEA)と工程FMEA(PFMEA)があり、自動車業界では顧客から提出を求められます。
現場でよく聞く課題は2つです。1つは、前の製品のFMEAをコピーして一部を書き換えるだけになり、新しい設計や工程の変化点が反映されない形骸化。もう1つは、過去に実際に起きた不具合がFMEAに反映されず、同じ故障モードが見落とされることです。生成AIは、この2つの課題の「抜け漏れの検出」に向いています。
ステップ1:変化点から故障モードの候補を出させる
新しいFMEAを作るときは、前の製品からの変化点(設計変更、材料変更、工程変更、設備変更、仕入先変更)を生成AIに渡し、各変化点から起こりうる故障モードの候補を出させます。
既存の故障モード一覧を渡して「既存にないもの」を出させるのがポイントです。一般的な故障モードの列挙だけを頼むと、既に記載済みのものが大量に返り、確認の手間が増えます。
ステップ2:過去トラと照合して漏れを検出する
過去の不具合報告・クレーム・工程内不良の記録を検索できるようにしておき(過去トラRAG)、FMEAの各機能・工程について、過去に起きた不具合がFMEAに記載されているかを照合させます。
照合結果には、根拠にした過去の不具合報告の番号を必ず付けさせます。担当者は報告書の原文を読み、当時と条件が同じか(同じ材料・同じ構造か)を判断して、FMEAへの追加を決めます。過去トラ検索の精度の作り方は品質記録・過去トラのRAG検索で扱っています。
過去トラがFMEAに記載されていた場合も、その情報は使えます。実際に何度起きたかは、発生度の評価を見直す材料になります。MESや品質管理システムの不良実績から発生件数を集計できれば、発生度の根拠を数字で示せます。
ステップ3:評価点は社内基準で人が付ける
重要度・発生度・検出度の点数付けは、生成AIに任せません。理由は3つあります。
- 評価基準は会社や顧客ごとに違う:同じ故障モードでも、顧客の要求や製品の用途で重要度が変わります
- 根拠が社内のデータにある:発生度は自社の不良実績、検出度は自社の検査工程の能力で決まり、一般知識からは推測できません
- 責任の所在:FMEAは設計・工程の品質に対する会社の判断の記録で、顧客監査の対象です
FMEAで生成AIを使うときの体制
FMEAの支援は、設計者や生産技術者が個人で生成AIを使うより、品質保証部門が過去トラの検索基盤と指示文のテンプレートを用意し、各部門がそれを使う形のほうが品質が揃います。
- 品質保証:過去トラの検索基盤の整備、指示文テンプレートの管理、漏れ候補の採否の記録
- 設計・生産技術:変化点の一覧作成、漏れ候補の確認とFMEAへの反映
- 情報システム:機密区分に合った実行環境の用意(設計情報を扱うため)
採否の記録を残しておくと、どの種類の漏れ候補が採用されやすいかがわかり、指示文の改善に使えます。設計レビューでの活用は設計レビューに生成AIを使う、8Dレポートでの活用は8Dレポート・不具合報告書を生成AIで下書きするで扱っています。
よくある質問
FMEAを最初から生成AIに作らせることはできますか?
一般的な故障モードを並べた表は作れますが、自社の設計・工程の変化点や過去の不具合が反映されないため、形骸化したFMEAと同じ問題が起きます。既存FMEAと変化点を入力にして、差分の候補を出させる使い方をおすすめします。
AIAG-VDAのFMEAハンドブックの形式に合わせられますか?
形式の項目(構造分析、機能分析、故障分析など)を指示に含めれば、その形式に沿った候補の整理はできます。ただし評価の基準表の適用は、人が社内基準と照らして行ってください。
過去トラが少ない新製品の場合はどうしますか?
類似製品や類似工程の過去トラを検索対象に広げます。それでも少ない場合は、変化点からの候補出し(ステップ1)を中心に使い、試作評価で起きた不具合を早めに記録して検索対象に加えます。
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