この記事は はじめての製造業AI 第1章「製造業AIの基礎を知る」の 1-4 です。次に読む:製造業のAI導入テーマの選び方:4つの評価軸で候補に優先順位を付ける

結論:「工程へのAI導入」と「生成AIの利用」は別の指標

製造業のAI導入率を語るとき、まず区別すべきは次の2つです。

  • 製造工程へのAI導入率:検査・保全・計画などの工程でAIを使っている企業の割合。2025年版ものづくり白書が引用したJILPT調査(2025年5月)で12.2%、大企業に限ると31.3%
  • 生成AIの利用率:従業員がメール作成や文書要約などで生成AIを使っている割合。調査によって24.6%から65.6%まで開く

前者は工場の設備やシステムに組み込まれたAIの話で、後者は個人の事務作業の話です。生成AIの利用率が5割を超えても、工程でAIが動いている企業は1割強にとどまります。この2つを混同した「製造業の半数以上がAIを導入」という表現は、現在地を実態より大きく見せます。

製造工程にAIを導入済みの企業
12.2%
JILPT調査(2025年5月)、2025年版ものづくり白書
同・大企業
31.3%
同上
製造業の個人の生成AI利用率
33.3%
令和8年版労働経済白書(厚生労働省、2026年9月)

7本の調査を同じ表に並べる

主な調査を、調査主体・対象・設問の違いで整理すると次のようになります。

調査時期対象何を聞いたか数字
JILPT(ものづくり白書2025で引用)2025年5月ものづくり企業製造工程へのAI導入12.2%(大企業31.3%)
総務省 令和7年版情報通信白書2024年度日本企業(全産業)何らかの業務で生成AIを使用中55.2%
総務省 令和8年版情報通信白書2025年度日本企業(全産業)生成AIの活用方針を策定68.9%(大企業74.0%、中小58.1%)
IPA「DX動向2026」2026年7月公表日本企業(全産業)生成AIを導入44.0%(前年度22.6%)
厚労省 令和8年版労働経済白書2026年9月公表製造業の個人生成AIの利用33.3%
MONOist読者調査2025年2月、402件製造業のメルマガ読者業務で生成AIを日常的・時々使う65.6%
アルダグラム調査2025年6月、各業界500人製造業の就業者生成AIの業務活用24.6%

同じ「製造業の生成AI利用率」でも、MONOist読者の65.6%と、一般就業者を対象にしたアルダグラム調査の24.6%では2.7倍の差があります。MONOistの読者はITへの関心が高い層で、設問も「時々使う」を含みます。このほか、アルサーガパートナーズの製造業311名調査(2025年7月)では51.0%でした。数字の差は、母集団・設問・時期の差で説明できます。

データ活用の段階で見ると、ボトルネックは「つなぐ」部分

AIの導入率より手前の段階を見ると、製造業の課題がよりはっきりします。2026年版ものづくり白書の図表(RIETI BBL資料のテキストから読み取った値)では、一連の製造プロセスのデータを取得している事業者は66.0%、取得データを活用しているのは51.4%、効果が出たのは43.9%でした。同白書は、企業間のデータ連携が2年前からほとんど進んでいないと指摘しています。

データ取得66.0%、活用51.4%、効果43.9%、工程へのAI導入12.2%の棒グラフ データを取得66.0% データを活用51.4% 効果が出た43.9% 工程へのAI導入12.2%(JILPT、別調査)
製造データの取得から効果までの段階別の割合(2026年版ものづくり白書の図表値。RIETI BBL資料からの読み取りで、図との対応は推定)。工程へのAI導入はさらにその先にある。

データを取っている企業の約2割強は、そのデータを活用できていません。原因として多いのは、設備ごとにタグ名や単位がばらばらで、ロットや作業指示と紐付かないことです。AIの導入率が上がらない理由は、AIの技術より、この「データがつながらない」段階にあります。点検の方法はAI導入前の製造データ準備で解説しています。

海外と比べた位置

国際比較では、日本の数字はまだ低い水準にあります。総務省のAIガバナンス検討会資料(2025年12月)によると、企業の業務での生成AI利用率は2024年に米国90.6%、中国95.8%、ドイツ90.3%に対し、日本は55.2%でした。令和8年版労働経済白書では、製造業の個人の生成AI利用率33.3%は米国(約60%)のおよそ半分とされています。

ただし海外でも、利用と成果は別です。Rockwell Automationの第10回スマート製造調査(2025年、17か国1,560人)では95%がAI/MLに投資済みか投資予定と答えた一方、Manufacturing Leadership Councilの2025年初頭の調査では、エージェント型AIを使っている製造業は6%でした(Deloitteのレポートで紹介)。国別の比較は日本の製造業AIは遅れているのかで詳しく扱います。

自社の位置を測るときに使う数字

自社の工程を3段階で数えると、どこで止まっているかが分かり、次の投資先(データ整備か、AIのテーマ選定か)を決めやすくなります。

よくある質問

製造業のAI導入率の最新の数字はどれですか?

工程へのAI導入なら、2025年版ものづくり白書が引用したJILPT調査(2025年5月)の12.2%が、公的な調査で確認できる数字です。2026年版ものづくり白書は分析の焦点をDXからAIへ移していますが、本文の詳細な数値は原典での確認をおすすめします。

なぜ調査によって数字がこんなに違うのですか?

主に3つの違いがあります。対象(ITに関心の高い読者か、一般の就業者か、企業か)、設問(使ったことがあるか、業務で日常的に使うか、方針を定めたか)、時期(生成AIの利用は1年で大きく伸びている)です。数字を比べるときは、この3点が揃っているかを確認してください。

大企業と中小企業の差はどのくらいですか?

製造工程へのAI導入は全体12.2%に対し大企業31.3%です。製造工程でのデジタル技術の活用は、従業員301人以上で67.9%、50人以下で31.5%と、36.4ポイントの差があります(2025年版ものづくり白書)。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。