Virtual Companionsは3DEXPERIENCEのデータを前提にした3つの専門AI

Virtual Companionsは、Dassault Systèmesが3DEXPERIENCEプラットフォーム上で提供するAIエージェント群です。汎用チャットボットではなく、PLMに蓄積された要件・設計・材料のデータを文脈として使う点が特徴で、同社は2026年2月11日の3DEXPERIENCE World 2026で次の3つを発表しました(同社発表)。

名称担当領域想定する利用者2026年2月時点の状態
Aura要件・プロジェクト・変更の知識と文脈プロジェクト管理、設計変更管理提供済み
Leo設計から生産までの工学課題設計者、CAE担当、生産技術2026年中に提供予定
Marie材料・化学・処方材料開発、化学・素材メーカーのR&D2026年中に提供予定

Auraの原型は、2025年2月にSOLIDWORKS向けとして発表された対話型アシスタントです。当時はSOLIDWORKSの研修ガイド、ベストプラクティス、ヘルプを学習したチャットボットとして紹介され、応答はユーザー固有でIP保護に配慮するとされていました(DEVELOP3D、2025年2月)。1年でPLM全体の知識を扱うエージェントへ位置づけが広がったことになります。

Dassaultは、Virtual Companionsを「Industry World Models」と物理・材料科学で検証されたマルチスケールシミュレーションの組み合わせと説明し、LLMを超えるものと位置づけています(Digital Engineering 24/7、2026年2月)。言語モデルの回答だけでなく、シミュレーションで裏づけた結果を返すという主張です。この「検証済み」の範囲がどこまでかは、導入検討時に個別に確認する必要があります。

2026年7月の拡張:19の能力と主権クラウドOUTSCALE

2026年7月23日、DassaultはVirtual Companionsを19のコンピテンシー(能力)に拡張し、3大陸にあるOUTSCALEのAIファクトリーで稼働させると発表しました(同社発表)。同社ブログでは、AURA・LEO・MARIEが3DEXPERIENCE SaaS上で全世界に提供されていること、LEOは単一のプロンプトから組立構造の生成、シミュレーション実行、設計評価、エラー解決までできるとされています。

Aura・Leo・Marieが3DEXPERIENCEのデータ層の上で動き、OUTSCALE主権クラウドで稼働する構成図 Aura要件・変更・プロジェクト Leo設計・シミュレーション・生産 Marie材料・化学・処方 3DEXPERIENCEのデータ(要件・BOM・CAD・CAE・材料)版管理・権限・メタデータの整備度が回答の質を左右する OUTSCALE AIファクトリー(3大陸の主権クラウド)
Virtual Companionsの位置づけ。3つのAIが3DEXPERIENCEのデータを共通の文脈として使い、主権クラウド上で動く。

欧米では、設計データやIPの保護を理由にした「主権AI」が大手ベンダーの売り文句になっています。AWSが顧客データセンター内で専用AI基盤を動かすAI Factoriesを2025年12月に発表したのも同じ流れです。図面や処方データを海外のどのクラウドで処理するかは、日本の製造業にとっても調達条件の一つになりつつあります。この論点は主権AIと製造データの置き場所で詳しく扱っています。

回答の質はPLM側のデータ整備で決まる

Virtual Companionsが参照するのは3DEXPERIENCE上のデータです。したがって、AIの回答の質は、PLMにどれだけ正しく構造化されたデータが入っているかに依存します。実務で差が出るのは次の3点です。

  1. 版管理:旧版の図面や仕様が「最新」として残っていると、AIはそれを根拠に答えます。リリース状態とライフサイクルの運用が守られているかを先に確認します。
  2. 属性とメタデータ:材料、公差クラス、適用製品などの属性が空欄だらけでは、Marieのような材料系AIは推論の手がかりを失います。
  3. 製造側との接続:設計から生産までを扱うLeoの価値は、実際の製造実績や不具合情報とつながって初めて出ます。MESや品質システムのデータがPLMと切れている工場では、設計側の知識だけで答えることになります。

他社のPLM系AIとの比較軸

PLMベンダー各社も同様のAIを出しています。PTCはWindchillの製品データを使う「Windchill AI」を2025年3月にプレビューし、文書から品質情報や試験結果を抽出するエージェントを含めました。SiemensはNX向けのDesign Copilotを提供しています。比較する際は、機能名ではなく次の軸で並べると判断しやすくなります。

比較軸確認する内容
参照データの範囲自社PLMのデータだけか、製造実績・外部文献も扱うか
根拠の提示回答の根拠となった部品・文書・シミュレーション結果を示せるか
実行範囲提案のみか、設計変更やシミュレーション実行まで行うか
データの所在処理するクラウドとリージョン、学習への利用有無
提供形態SaaS限定か、オンプレミス版の計画があるか

効果の数字については、各社とも現時点では発表ベースのものが中心です。第三者の検証値が出るまでは、自社のPoCで同じ設計課題を解かせて比べるのが確実です。ベンダーの数字の読み方はベンダー発表の効果数値の読み方を参照してください。

よくある質問

Virtual Companionsは日本語で使えますか?

2026年7月時点の公表資料では、全世界に提供されていることは示されていますが、言語ごとの対応範囲は明示されていません。日本語の要件書や図面注記をどこまで正しく扱えるかは、自社の実データで試して確認することをおすすめします。

3DEXPERIENCEを使っていなくても利用できますか?

Virtual Companionsは3DEXPERIENCEプラットフォーム上のサービスとして発表されています。SOLIDWORKSのデスクトップ版などとの関係は製品ごとに異なるため、販売代理店に契約形態を確認してください。

自社の設計データがAIの学習に使われる心配はありませんか?

2025年のAura発表時には、応答はユーザー固有でIP保護に配慮すると説明されました。ただし学習への利用可否や保存期間は契約条件で決まります。主権クラウドで稼働することと、学習に使われないことは別の話なので、両方を契約書で確認してください。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。