4社とも「設計の自動生成」より「検索・要約・定型操作」が先行している

CAD・PLMの生成AIアシスタントは、発表資料の見出しだけを読むと「AIが設計する」ように見えます。しかし各社の公表内容を突き合わせると、2026年10月時点で実際に提供されている機能の中心は、製品データの検索と要約、ヘルプやベストプラクティスへの質問応答、拘束付与やBOM送付のような定型操作の自動化です。テキストから編集可能な3Dモデルを生成する機能は、Autodeskが「将来Fusionに提供予定」としている段階にとどまります。

設計部門が比較するときは、機能名ではなく次の3つの軸で見ると違いがはっきりします。

  1. 提供状況:一般提供(GA)か、プレビュー・ベータか、構想か
  2. 対象業務:要件管理、3D設計、BOM・変更管理、材料、サービスのどこに効くか
  3. データの扱い:自社のPLMデータをどこで処理し、学習に使われるか

4社の生成AIアシスタントを同じ軸で比較する

項目Dassault SystèmesAutodeskArasPTC
主な名称Virtual Companions(AURA・LEO・MARIE)Autodesk Assistant、neural CADAI-Assisted Search、Intelligent Assistant、InnovatorEdge Edge AIWindchill AI、Codebeamer AI、ServiceMax AI
提供状況2026年7月時点で3つとも3DEXPERIENCE SaaSで全世界提供(同社発表)Fusion・Vaultのアシスタント機能を2025年10月に強化。neural CADは将来提供予定検索・アシスタントは2025年3月発表(SaaS向け)、Edge AIは2026年2月発表Windchill AIは2025年3月にプレビュー。Codebeamer AIは1.2版を告知(PTCニュースルーム)
対象業務要件・変更の知識(AURA)、設計〜生産の工学課題(LEO)、材料・化学(MARIE)スケッチ拘束・加工ツールパスの自動化、BOMのPLMワークフロー送付PLM内の検索、対話型支援、エージェント型ワークフローの構築・統制製品データの質問応答、文書から品質情報・部品仕様・試験結果を抽出
データ処理の考え方主権クラウドOUTSCALEのAIファクトリーで稼働と発表公表資料からは確認できず、個別確認が必要Azure OpenAI ServiceとCopilot Studioを統合Azure AIを利用(Codebeamer Copilotの共同開発時点)

DassaultのLEOについては、単一のプロンプトから組立構造の生成、シミュレーション実行、設計評価、エラー解決ができると同社ブログが説明しています。ただし、これは同社の発表内容で、第三者による評価結果は公表されていません。

PTCはVolkswagen GroupとMicrosoftとともに、要件管理ツールCodebeamer向けの生成AI Copilotを共同開発すると2024年12月に発表しました。要件管理は、自然言語の文書が中心で生成AIと相性がよい領域です。Arasは、PLMの上でAIエージェントやアプリをローコードで作るInnovatorEdgeを「Adaptive Intelligence」という方向性の中に位置づけています。

なお、SiemensもNX向けのDesign Copilotを提供しています。PLC開発側の比較はPLC開発Copilot比較で扱っています。

設計部門が導入前に確認すべき5つの点

CAD・PLM生成AIアシスタントのデータの流れ PLMのデータ 3Dモデル・図面 BOM・変更履歴 要件・試験結果 設計基準・過去トラ 生成AIアシスタント 検索・要約・定型操作 回答・下書き CAD操作の自動化 設計者の確認・承認
CAD・PLMの生成AIは、PLMに整理されたデータの量と質で回答品質が決まる。
  1. 自社のCAD・PLMの版で使えるか。多くの機能はSaaS版が先行し、オンプレ版では提供時期が異なります
  2. 回答の根拠として参照するデータの範囲。PLMに登録されていない設計基準や過去トラ(過去のトラブル事例)は参照できません
  3. 設計データが学習に使われるか、どの地域のクラウドで処理されるか。輸出管理対象の図面を扱う場合は特に重要です
  4. 生成結果の記録。どの提案を誰が採用したかを変更履歴に残せるか
  5. 効果の数字の出どころ。同社発表の見込み値か、顧客の実測か

3つ目は、PLMとMESを連携させている工場では製造側にも波及します。設計変更(ECO)がMESの作業手順や検査項目に流れる構成では、AIが下書きした変更内容が承認を経ずに製造へ届かないよう、承認ステータスの扱いをPLM側で決めておく必要があります。

選び方は「すでに使っているPLM」でほぼ決まる

CAD・PLMの生成AIアシスタントは、各社のプラットフォームの上で動くことが前提です。DassaultのVirtual Companionsは3DEXPERIENCEの、Windchill AIはWindchillのデータを前提にしています。そのため実務上は「どのAIが優れているか」より「自社のPLMベンダーのAIがどこまで来ているか」を確認し、足りない部分を汎用の社内文書RAGで補う構成が現実的です。

複数のCADを併用している会社や、PLMを持たない中小製造業では、特定ベンダーのアシスタントより、図面PDFとBOMを社内文書RAGに取り込む方法が先に候補になります。設計部門全体のAI活用の地図は設計・開発部門のAI活用を参照してください。

よくある質問

生成AIで3D CADモデルを自動作成できる段階ですか

2026年10月時点では、テキストから編集可能なCADモデルを生成する機能は、Autodeskが将来提供予定とする段階です。DassaultのLEOは組立構造の生成をうたっていますが、実業務での精度は公表されていません。現状は拘束付与やツールパスなど定型操作の自動化が中心です。

PLMベンダーのAIと社内文書RAGはどちらを先に入れるべきですか

PLMにデータが整理されている会社はPLMベンダーのAIを先に試す価値があります。図面やBOMがPLM外に散在している会社は、社内文書RAGで検索ニーズを確かめながら、並行してPLMへのデータ集約を進めるのが順当です。

設計データが学習に使われないかはどう確認しますか

契約書と利用規約で、入力データ・出力データの学習利用の有無、処理するデータセンターの地域、ログの保存期間を確認します。公表資料だけでは判断できないため、ベンダーに書面で回答を求めてください。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。