設計部門のAIは5つの使い方に分かれる

設計・開発部門で使われるAIは、次の5つに分けると整理しやすくなります。成熟度と、必要なデータの種類がそれぞれ違います。

使い方何をするか必要なデータ成熟度
1. 過去設計・図面の検索類似形状や類似仕様の過去図面を探す図面、3D CAD、BOM、設計変更履歴高い(製品が多い)
2. 図面情報の読み取り2D図面から寸法・公差・注記を抽出する図面画像と注釈データ中(研究と製品化が進行中)
3. CAE代替モデル過去の解析結果から応力や流れを数秒で推定する数百〜数千ケースの解析結果中(設計初期の探索向け)
4. 生成設計荷重・制約から形状案を自動生成する荷重条件、製造制約、材料中(製造方法の制約が大きい)
5. 文書作成・設計レビュー支援仕様書・検図・設計ルール確認を生成AIで支援する設計基準、過去の指摘、仕様書中〜高

始めやすいのは1と5です。過去図面の検索は、設計の重複を防ぎ、部品の共通化を進めるという効果が分かりやすく、データ(図面とBOM)も社内にすでにあります。

公開事例で見る生成設計とCAE代替

生成設計の代表例として、GMとAutodeskのシートブラケットがあります。Autodeskの事例ページによると、従来品より40%軽く20%強く、8部品を1部品に統合しました。Airbusは2016年3月、A320客室の仕切りを生成設計で作り、従来設計より45%(30kg)軽くしたと発表しています。

ただし、どちらも積層造形(3Dプリンター)を前提にした形状です。生成設計の形状は鋳造や切削の制約に合わないことが多く、量産品でコストが合わない場合があります。

CAE代替モデル(サロゲートモデル)では、DeepMindが2021年に発表したMeshGraphNetsが、元のシミュレーターより1〜2桁速く計算できると報告しました。GPUでの高速化率は構造力学で89倍、翼周りの流体で289倍です。設計の初期段階で何百もの候補を絞り込む用途では有効ですが、学習した範囲の外の形状では誤差が大きくなります。

生成設計によるシートブラケットの軽量化
40%
Autodesk事例(GM)
MeshGraphNetsのGPUでの計算高速化
89〜289倍
Pfaff et al.(DeepMind, ICLR 2021)
図面からのGD&T抽出F1(汎用モデル比、相対値)
+52.40%
Khan et al.(arXiv 2411.03707, 2024年11月)

図面の読み取りでは、2024年11月の研究で、0.23Bパラメータの小型の画像言語モデルを専門家が注釈した図面400枚で追加学習させると、汎用の大型モデル(GPT-4o、Claude-3.5-Sonnetのうち良い方)よりF1が52.40%高く、誤った情報を作り出す率が43.15%低かったと報告されています(いずれも相対値)。汎用の生成AIに図面をそのまま読ませるより、自社の図面で学習させた専用モデルの方が精度が出やすいことを示す結果です。

国内外ベンダーの動き

設計ツールのベンダーは、CADやPLMに生成AIの機能を組み込み始めています。Dassault Systèmesは2026年2月にAI「バーチャル・コンパニオン」のAura・Leo・Marieを発表し、Leoは設計から生産までの工学課題を担当するとしています。Autodeskは2025年10月、Fusionでスケッチの拘束や加工ツールパスを自動化する機能を発表しました。国内では日立製作所が2026年9月に、3D CADの設計ルール違反を自動チェックする「設計ナレッジシステム」の提供を始めています(同社発表)。

これらの機能は、自社のCAD・PLM環境に依存します。ツール選びの段階で、図面・BOM・設計変更履歴がどのシステムにあり、AIがどこまで参照できるかを確認してください。

構想、詳細設計、解析、検図、出図の設計プロセスと各段階に入るAIの使い方の図 構想 詳細設計 解析 検図 出図・承認 過去設計検索生成設計 類似部品の流用・共通化 CAE代替で候補を絞る 図面読み取りルール確認 AIは使わない設計者が判断 最終判定は従来CAEと設計者のレビューで行う
設計プロセスのどこにAIが入るか。検証と承認は設計者の責任として残る。

設計検証の責任は設計者に残る

設計AIで最も大切な線引きは、AIの出力を設計判断の根拠にしないことです。CAE代替モデルは候補の順位付けには使えても、最終の強度判定は従来のCAEで行います。生成AIによる検図支援も、指摘の漏れがないことは保証しません。設計の承認記録には、AIを使った工程と、人が確認した範囲を残しておくと、後の品質監査で説明しやすくなります。

よくある質問

生成AIに図面を読ませれば寸法を自動で取り出せますか

汎用の生成AIでもある程度は読めますが、公差記号や注記の誤読が起きやすいことが研究で示されています。自社の図面数百枚で追加学習した専用モデルの方が精度は高く、取り出した値は人が確認する運用が前提です。

CAE代替モデルにはどれくらいの解析データが必要ですか

対象と手法によりますが、数百〜数千ケースの過去解析が目安です。同じ種類の部品で条件を変えた解析が蓄積されている領域から始めると、学習範囲の外で使ってしまう失敗を避けやすくなります。

生成設計はどの部品に向いていますか

積層造形で作れる部品、軽量化の価値が大きい部品(航空・モビリティなど)に向きます。鋳造や切削で量産する部品では、製造制約を入れた生成設計を使っても、従来設計とのコスト比較が欠かせません。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。