2製品の位置づけ

PLCのエンジニアリング環境に組み込まれた生成AIは、使っているPLCのメーカーでほぼ決まります。SiemensのPLCを使う工場はTIA Portalの、Rockwell(Allen-Bradley)のPLCを使う工場はFactoryTalk Design Studioの選択肢を検討することになり、製品を横断して選ぶ場面は多くありません。比較の目的は「どちらを選ぶか」より、「自社が使うほうの製品で何に注意すべきか」を知ることにあります。

比較軸Siemens Industrial Copilot(Engineering)Rockwell FactoryTalk Design Studio Copilot
組み込み先TIA PortalFactoryTalk Design Studio(SaaSの設計環境)
主な機能自然言語からSCL(構造化テキスト)を生成自然言語からのコード・ラダーロジック生成、コードの説明、トラブルシュート
基盤Microsoftとの協業(Industrial Copilot全体)Microsoft Azure OpenAI Service
公表された効果SCL生成が推定約60%高速化(2025年3月、同社推定)定量値の公表なし
公表された事例thyssenkrupp Automation Engineeringがグローバル展開中、Schaefflerが2024年に現場で利用公表事例は確認できず
公式の注意事項公表資料では確認できず「不正確な情報を表示する可能性がある」と明記、オンラインヘルプとの照合を求める。会話文脈は直近5往復のみ参照

Siemens:Industrial Copilotの一部としてのEngineering Copilot

SiemensのEngineering Copilotは、Industrial Copilotと呼ばれる製品群の1つです。2025年5月の同社発表時点で、Design Copilot(NX CAD)、Engineering Copilot(TIA Portal)、Operations Copilot(Insights Hub)は提供中、Planning Copilotはプレリリースとされていました。同じ発表で、オーケストレーターが専門のAIエージェント群を配備する構想と、Siemens Xcelerator Marketplace上のAIエージェントのマーケットプレイス計画も示されています。

効果の数字は「SCL生成が推定約60%高速化」で、同社の推定値です。何と比べた60%か、どの規模のプログラムかは公表資料からは読み取れません。Siemens Digital Industriesのトップは顧客の生産性を「最大50%」向上させる構想も示していますが、これは将来の見通しで実測ではありません。製品群全体はSiemens Industrial Copilotとはで扱っています。

Rockwell:公式ヘルプで限界を明記

RockwellのFactoryTalk Design Studio Copilotは、2024年12月に追加が報じられた生成AI機能で、自然言語でのコード・ラダーロジック生成、既存コードの説明、トラブルシュートができます。同社はAutomation Fair 2025でもこのCopilotを紹介しています。

注目すべきは、公式ヘルプの書き方です。Copilotが不正確な情報を表示する可能性があることを明記し、オンラインヘルプと照合するよう求めています。また、会話の文脈として参照するのは直近5往復だけであることも記載されています。長いやり取りの中で前提条件を伝えた場合、それが途中から参照されなくなる可能性があるということです。

Rockwellはこのほか、FactoryTalk OptixにMicrosoftのPhi-3をベースにした食品・飲料向けの小型言語モデル(SLM)を載せ、包装機のオペレーターにエッジでガイダンスを出す取り組みも発表しています(2024年12月報道)。設計環境のCopilotと現場HMIの言語モデルの2系統がある点は、Rockwellの生成AIで整理しています。

Siemensは効果の推定値を、Rockwellは不正確な出力の可能性を公表していることを並べた図 Siemens 対象:TIA Portal・SCL効果:SCL生成 推定約60%高速化事例:thyssenkrupp・Schaeffler注意事項:公表資料では確認できず Rockwell 対象:Design Studio・Logix効果:定量値の公表なし事例:公表事例は確認できず注意事項:不正確な出力の可能性を明記
2製品の公表情報の比較。効果の数字と注意事項の公表の仕方が対照的になっている。

導入前に確認すべき5つの点

どちらの製品を使う場合も、導入前に次の点を確認してください。

項目5は特に注意が必要です。海外で発表された機能が、日本では提供されていない、あるいは提供時期が異なることがあります。公表資料だけで判断せず、販売代理店や各社の日本法人に確認してください。

運用の注意:安全PLCは対象外にする

両製品とも、生成されたコードの正しさは利用者が確認する前提です。運用では、次のルールを明文化しておきます。

研究の世界でも、汎用LLMはそのままでは有効なPLCコードを安定して生成できないことが報告されています。検証の仕組みを含めた全体像はPLC・ラダー生成AIの実力で扱っています。

よくある質問

三菱電機やオムロンのPLCにも同様の製品はありますか?

国内では、オムロンがLaboro.AIとPLC向けの設計コード生成AIを開発し、制御設計者のコーディングを支援していると公表されています。各社の提供状況は変わりやすいため、使用しているPLCメーカーに直接確認するのが確実です。

汎用のChatGPTなどでPLCコードを書かせるのと何が違いますか?

エンジニアリング環境に組み込まれた製品は、プロジェクトのタグや既存コードを文脈として使え、生成結果をそのまま環境に取り込めます。汎用サービスは文脈を手で渡す必要があり、社外にコードを出すことになる点にも注意が必要です。

効果を自社で測るにはどうすればよいですか?

同じ仕様の定型ブロックを、Copilotあり・なしで作成し、作成時間とレビューでの指摘件数、コンパイルエラーの回数を比べます。作成時間だけでなく、レビューと修正の時間を含めて比べることが大切です。

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この特集について

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  4. 生成AIの情報漏えい対策:製造業が決めるべき入力禁止情報とログ管理の7項目
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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。