3つの言葉は「包含関係」にある

AI・機械学習・ディープラーニングは、並列の選択肢ではなく、大きな枠の中に小さな枠が入る関係にあります。

AIの中に機械学習、その中にディープラーニングがある入れ子の図 AI(人工知能)ルールベースの判定、数理最適化、探索なども含む広い概念 機械学習データから規則を学ぶ:回帰、決定木、勾配ブースティング、Isolation Forest、PLSなど ディープラーニング(深層学習)多層のニューラルネットワーク:画像のCNN、時系列のオートエンコーダ、生成AIのTransformerなど
AI・機械学習・ディープラーニングの包含関係と、製造業での代表的な手法。
用語意味製造業での例
AI(人工知能)人の知的な判断を機械で行う技術の総称。学習しないものも含む制約プログラミングによる生産計画、エキスパートシステム
機械学習データから規則やパターンを学ぶ手法。AIの一部工程条件から品質を予測する回帰モデル、勾配ブースティングによる需要予測
ディープラーニング多層のニューラルネットワークを使う機械学習。特徴を自動で取り出せる画像による外観検査、音・振動の異常検知、生成AI

ディープラーニングは、画像や音のように人が特徴を設計しにくいデータで強みを発揮します。一方で、工程の温度や圧力のような表形式のデータでは、勾配ブースティングなどの従来の機械学習が今も主力です。

例1:外観検査(ディープラーニングが主役)

外観検査は、ディープラーニングが最も効果を出している領域です。現在主流の良品学習の手法PatchCore(2022年)は、ImageNetという大量の一般画像で事前に学習した畳み込みニューラルネットワーク(CNN)の中間層の特徴を使い、良品から外れたものを異常と判定します。研究用データセットMVTec ADで画像レベルのAUROC最大99.6%を報告しています。

ただし外観検査でも、ディープラーニングが常に必要なわけではありません。寸法の計測、部品の有無、印字の読み取りのように基準が明確な検査は、従来の画像処理(エッジ検出、パターンマッチング)で十分なことが多くあります。ディープラーニングが効くのは、傷・汚れ・色ムラのように形が一定でなく、ルールで書きにくい欠陥です。

例2:予知保全(3つの層がすべて使われる)

予知保全では、AI・機械学習・ディープラーニングのそれぞれが使われます。

  • ルール(機械学習ではないAI・管理手法):振動の国際規格ISO 20816の評価ゾーンのように、振動の大きさが閾値を超えたら警報を出す方法。説明しやすく導入も速いのが利点です。
  • 機械学習:Isolation Forestなどで、複数のセンサ値の組み合わせから「いつもと違う」状態を見つけます。運転条件(負荷・回転数)で正常の範囲を分けると誤報が減ります。
  • ディープラーニング:振動や音の波形をそのまま入力し、オートエンコーダなどで異常を検出します。日立が公開した設備音のデータセットMIMIIを使った国際コンペ(DCASE2020)では、上位チームが機械IDを識別する分類器などの深層学習を使いました。

実務では「閾値で一次警報 → 機械学習で優先度付け」のように組み合わせることが多くあります。時系列の異常検知では、71手法を967系列で比較した研究(2022年)で、KNNなどの距離ベースの単純な手法が頑健で、再構成型の深層学習手法の多くは目立った成果を出せませんでした。ディープラーニングが常に最良とは限りません。

例3:生産計画(機械学習を使わないAIが主役)

生産計画のスケジューリングでは、学習ではなく、制約を満たす最適な組み合わせを探す数理最適化や制約プログラミングが主に使われます。これは機械学習ではありませんが、AIの一分野です。日立は日立ハイテクの半導体製造装置の生産計画を制約プログラミングで自動立案し、月最長5日かかっていた作業を月1日以内にしました(日立、2023年5月発表)。

深層強化学習を使ったスケジューリングの研究も進んでいますが、2024年のサーベイでは、学習した方策の最適性ギャップ(最適解との差)は約6〜20%で、トップクラスのヒューリスティクスにはまだ及ばないとされています。生産計画では、まず最適化ソルバーで解ける規模かを確認するのが実務の順番です。

手法を選ぶときの目安

データの種類まず検討する手法ディープラーニングが向く条件
画像基準が明確ならルール・画像処理傷・汚れなど形が一定でない欠陥
音・振動の波形閾値、周波数分析+機械学習特徴の設計が難しい、データが多い
工程条件(表形式)回帰、勾配ブースティング、PLS一般には不要なことが多い
計画・配分数理最適化、制約プログラミング大規模で頻繁な再計画が要る場合の研究段階
文書・図面検索、ルール生成AI(要約・質問応答)

ルールで足りる課題の見分け方はAIかルールベースか、正解ラベルの有無による手法の違いは教師あり学習と教師なし学習の違いで扱います。

よくある質問

生成AIはディープラーニングの一種ですか?

はい。ChatGPTなどの生成AIは、Transformerという構造の大規模なニューラルネットワークで、ディープラーニングの一種です。製造業では文書やナレッジの扱いに使われ、数値の判定や予測は従来の機械学習やディープラーニングの分析系モデルが担います。

機械学習とディープラーニング、どちらを選べばよいですか?

データの種類で決めます。画像・音・波形のように人が特徴を設計しにくいデータはディープラーニング、工程条件のような表形式のデータは従来の機械学習が出発点です。迷ったら、単純な手法で基準となる精度を出してから、複雑な手法と比べます。

ルールベースはAIと呼べますか?

広い意味ではAIに含まれますが、データから学習はしません。製造業では、閾値管理やSPC(統計的工程管理)で十分な課題も多く、学習するAIを使わない方が説明と保守が楽になる場合があります。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。