総額1.2兆元、前年比40%増

中国信息通信研究院(中国信通院、CAICT)によると、2025年の中国AI産業規模は1.2兆元を超え、前年比40%増でした(中国日报、2026年8月3日)。2026年6月時点のAI企業数は6,600社超で、世界の約15%を占めるとしています。

信通院は工業和信息化部(工信部)傘下の研究機関で、中国の政策立案に近い立場からデータを出しています。政府系の数字として引用されることが多いため、層別の構成まで押さえておくと誤読を避けられます。

2025年の中国AI産業規模
1.2兆元超
中国信通院(中国日报、2026年8月3日)
前年比の伸び率
40%
同上
中国のAI企業数(世界の約15%)
6,600社超
同上(2026年6月時点)

層別の構成:規模は応用層、伸びはモデル層

同じデータは、AI産業を3つの層に分けて構成比と伸び率を示しています。

層構成比前年比の伸び含まれるもの(一般的な定義)
応用層55%22%増業界向けのAIアプリ・ソリューション
基礎層38%59%増計算チップ・サーバー・データ・算力
モデル層7%189%増大規模モデルの開発・提供
応用層55%、基礎層38%、モデル層7%の横棒グラフと伸び率 応用層55%+22% 基礎層38%+59% モデル層7%+189% 出典:中国信通院(中国日报、2026年8月3日)
中国AI産業の層別構成(2025年、中国信通院)。棒の長さは構成比、右の数字は前年比の伸び。

規模で見ると、応用層が半分以上を占めます。伸びで見ると、モデル層が189%増と突出しています。ただしモデル層は構成比7%と小さく、母数が小さい分だけ伸び率が大きく出やすい点に注意が必要です。

基礎層の59%増は、GPUサーバーや算力への投資の伸びを反映しているとみられます。中国国内には1万枚超のAIアクセラレーターを持つクラスターが42あり、智算能力は1,590 EFLOPSを超えるとされます(北京商报、2026年1月21日)。

地域集中:上位5地域で80%超

同データによると、北京・広東・上海・浙江・山東の5地域で産業規模の80%超を占めます。

製造業の立場で見ると、この5地域には中国の主要な製造集積地も含まれます。一方、WEFの灯塔工場の省別分布では江苏が最多(21拠点、中国报告网、2026年4月)で、AI産業の集積地と先進工場の集積地は完全には一致しません。AIの供給側と製造業の需要側が地理的にずれていることは、地方政府が算力券などで需要側を支える理由の1つと読めます(推測)。

製造業向けの比率は、この数字からは分からない

この1.2兆元から「製造業向けAIは○億元」と推定することはできません。信通院の公表データには業種別の内訳が含まれていないためです。

製造業に絞った数字の読み方は中国の工業大模型市場12.1億元で扱っています。

工業分野のデータはどこにあるか

製造業に関係する公的な数字は、AI産業の統計ではなく、工業インターネットや智能制造の統計の中にあります。工信部のデータでは、2025年の工業インターネット核心産業は1.6兆元を超え、付加価値約2.5兆元を牽引する見込みです(经济参考报/新华网、2026年1月26日)。2025年の智能制造装备の産業規模は5兆元超の見込みとされます(中国政府网、2025年8月8日)。

これらの数字もAI産業の1.2兆元と重なる部分があり、足し合わせることはできません。製造業AIの規模を知りたいときは、どの統計の、どの範囲の数字かを常に確認する必要があります。

製造業の企業はこの数字をどう使うか

産業全体の数字は、個別の投資判断には直接使えません。それでも、製造業の企業にとって意味がある読み方は2つあります。

1つ目は、供給側の厚さです。AI企業6,600社超、基礎層の高い伸びは、中国の工場でAIを導入するとき、ベンダーや算力の選択肢が多いことを示しています。中国工場のAIを日本本社が一律に選ぶより、現地で調達したほうが早い場面もあります。ただし、生成AIサービスの備案(届出)や、データ越境の規定は確認が必要です。

2つ目は、価格の方向です。モデル層の189%増は、大規模モデルの提供者が急増していることを意味し、モデルの利用料には下押し圧力がかかります(推測)。中国工場でのAIのコストを見積もるときは、モデルの利用料より、データ整備と業務への組込みの費用が支配的になると考えておくのが安全です。この点は中国当局「AI投資の50〜60%はデータ工学」で扱っています。

よくある質問

世界のAI企業の15%が中国という数字は確かですか

信通院の発表に基づく数字です。AI企業の定義(AIを主業とする企業か、AIを使う企業か)は報道からは読み取れないため、他国の統計と比べるときは定義の確認が必要です。

2026年の見通しは出ていますか

今回参照した報道では、信通院の2026年予測は確認できていません。予測値を引用する場合は、原資料で発表時期と前提を確認してください。

この記事に出てくる用語

用語集(日・英・中)をすべて見る

この特集について

中国の「AI+製造」を追う

工業大模型、政策と補助金、日系工場への影響。日本語圏に届いていない一次情報 全75本

  1. 中国「人工智能+」行動意見とは:2027年に智能体普及70%超が製造業に意味すること
  2. 中国「AI+製造」専項行動(2026年1月)全解説:7分野21措置と2027年目標
  3. 中国データ越境規定(16号令)と日系工場:製造データを日本へ送れるか
  4. 中国「AI+製造」が日系企業に与える影響:競争・調達・規制の3つの視点
特集の記事をすべて見る →

この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。