首位は出典によって智元にも宇树にもなる

2025年の世界の人形ロボット出荷台数について、英調査会社Omdiaは約1.3万台と推計し、首位を智元机器人(AgiBot)の5168台(約39%)、2位を宇树科技(Unitree)の4200台、3位を优必选(UBTech)の1000台としました(界面新闻、2026年1月9日)。

一方、中国の業界紙・中国电子报がまとめた「2025人形机器人市场研究报告」は、世界出荷を1.45万台超とし、宇树を5500台超で首位、智元を5168台で2位、优必选を約600台としています。この報告の内容は、宇树側が提供した記事として通信業界メディアC114に掲載されたものです(2026年3月19日)。36氪も宇树の2025年出荷を5500台超と報じました(IT之家、2026年1月19日)。

つまり、智元の5168台は両方の出典で一致しているのに、宇树の台数(4200台か5500台超か)と优必选の台数(1000台か約600台か)が食い違い、その結果として首位が入れ替わっています。

項目Omdia(2026年1月)中国电子报の報告(2026年3月、ベンダー提供記事)
世界出荷約1.3万台1.45万台超
首位智元 5168台(約39%)宇树 5500台超
2位宇树 4200台智元 5168台
优必选1000台約600台
その他記載なし乐聚・加速进化・松延动力 各約1000台、众擎 約500台、星动纪元 約400台、傅利叶 約300台

これとは別に、CounterPointは2025年の世界の人形ロボット「稼働台数」を約1.6万台とし、中国が80%超を占めると推計しています。出荷台数ではなく稼働台数なので、上の2つと同じ物差しで比べられません。

数字が食い違う3つの理由

食い違いの原因は、どちらかが間違っているというより、数え方の前提が違うことにあります。公表資料から読み取れる範囲で、次の3点が考えられます。

出荷台数の食い違いを生む3要因 定義の差出荷・納入・稼働・受注 対象範囲の差二足・車輪型・研究用の扱い 情報源の性格第三者推計かベンダー提供か 首位・台数が出典で入れ替わる智元5168台は一致、宇树と优必选が不一致
人形ロボット出荷台数が出典ごとに変わる3つの要因。定義・時点・情報源の性格を確認してから比較する。

1つ目は定義です。工場向けに納入して検収された台数、研究機関や教育用途に販売した台数、展示・レンタル用の台数をどこまで含めるかで、合計は大きく変わります。宇树は研究・教育向けの低価格機(R1は5900ドルとされる)を持っており、これを含めるかどうかで台数が動くと考えられます(推測)。

2つ目は対象範囲です。二足歩行型だけを数えるのか、車輪型の双腕ロボット(例:银河通用のGalbot)も「人形」に含めるのかで、母数も順位も変わります。

3つ目は情報源の性格です。Omdiaは第三者の調査会社の推計で、中国电子报の数字は首位とされた企業側の提供記事を通じて広まったものです。どちらも検証可能な出荷明細を公開していません。

工場の導入検討で見るべきは台数ではない

工場への導入を検討する立場からすると、出荷台数のランキングより確認すべき数字があります。

  • 工場向けに納入された台数と、そのうち量産ラインで稼働している台数
  • 1台あたりの稼働時間と、実際に担っている作業(搬送・検査・巡回など)
  • 自律バッテリー交換の有無など、連続稼働の条件
  • 受注額の中に、出資者からの受注やデータ収集センター向け案件が含まれていないか

たとえば优必选のWalkerシリーズは、2025年の受注が8億元超、2025年中の納入が500台と同社が発表しています(2025年11月17日)。受注額と出荷台数と納入台数は別の数字で、どれを見るかで印象が変わります。受注の中身については人形ロボット「循環受注」の読み方で詳しく扱います。

工信部のデータでは、2025年の中国の人形ロボット整機メーカーは140社超、発表製品は330超です(新华社、2026年3月2日)。上位数社以外は年数百台規模で、量産体制と顧客基盤の差は大きいと読めます。各社の工場向け戦略は智元・宇树・银河通用の比較を参照してください。

海外調査機関の見方との温度差

国際ロボット連盟(IFR)は2025年8月14日のポジションペーパーで、人形ロボットの大量普及がいつ起こるかは不確実だとし、既存の産業用ロボットを置き換えるのではなく補完する存在と位置づけました。同じ文書は、欧州企業が短中期の製造業導入に慎重である一方、中国は量産目標を掲げていると対比しています。

年間1万数千台という規模は、産業用ロボット全体の年間設置台数と比べるとまだ小さく、出荷の多くが研究・教育・展示向けである可能性もあります(推測)。市場予測の幅についてはヒューマノイド市場予測の食い違いで整理しています。工場で何をさせているかの実例はヒューマノイドの工場実証一覧が参考になります。

よくある質問

2025年に最も多く出荷した人形ロボットメーカーはどこですか?

出典によって異なります。Omdiaは智元(5168台)、中国电子报の報告は宇树(5500台超)を首位としています。智元の台数は両者で一致しており、宇树の台数の数え方が差の主因です。

稼働台数1.6万台と出荷1.3万台はどちらが正しいのですか?

CounterPointの約1.6万台は2025年の稼働台数で、Omdiaの約1.3万台は2025年の出荷台数です。指標が違うため、どちらが正しいかを比べる性質の数字ではありません。

优必选の出荷台数はなぜ出典で大きく違うのですか?

Omdiaは1000台、中国电子报の報告は約600台、同社発表は2025年中の納入500台です。出荷・納入の定義と集計時点が揃っていないためと考えられます。同社の受注額は時点によって約4億元から8億元超まで推移しており、これも累計額の時点差です。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。