2年半で「技術目標→量産→標準」の順に進んだ

中国の具身智能(Embodied AI。身体を持って物理世界で動くAI)と人形ロボット(ヒューマノイド)の政策は、2023年から2026年にかけて、技術目標の設定、製造業での応用推進、標準体系の整備という順で積み上がってきました。

2023年10月の指導意見から2026年2月の標準体系までの5つの節目 2023年10月工信部 指導意見大脑・小脑・肢体 2025年8月「AI+」行動意見智能机器人を明記 2025年12月標準化技術委員会設立 2026年1月AI+制造 実施意見標杆ライン・訓練場 2026年2月28日標準体系2026版6部構成
中国の人形ロボット・具身智能政策の時系列(2023〜2026年)

2023年の指導意見:「大脑・小脑・肢体」の技術目標

起点は、工信部が2023年10月20日に出した「人形机器人创新发展指导意见」(工信部科〔2023〕193号)です(华尔街见闻、2023年11月2日)。2025年に「大脑・小脑・肢体」の技術突破、2027年に世界先進水準の生態系を目指すとしました。

「大脑」は認識・判断を担うAI、「小脑」は運動制御、「肢体」はアクチュエーターや手などの部品を指します。重点応用には3C(コンピューター・通信・家電)と自動車の模範ラインが含まれ、最初から製造業への投入を想定していた点が特徴です。

2025〜2026年:AI政策と製造業政策への組み込み

2025年8月26日の国务院「关于深入实施"人工智能+"行动的意见」は、次世代智能終端の1つとして智能机器人を挙げました(界面新闻、2025年9月)。

続く2026年1月7日の「"人工智能+制造"专项行动实施意见」の原文は、「建设人形机器人中试基地和训练场,打造人形机器人标杆产线,在典型制造场景率先应用」と書いています(原文PDF、财联社掲載)。中試基地(パイロット生産拠点)と訓練場(ロボットに動作を学習させるデータ収集の場)を作り、標杆ライン(模範ライン)で典型的な製造シーンに先行投入する、という3段構えです。

2025年12月〜2026年2月:標準化の体制と標準体系

工信部の「人形机器人与具身智能标准化技术委员会」は2025年12月に設立されました。2025年11月公表の委員名簿には、宇树(Unitree)の王兴兴、智元(AgiBot)の彭志辉のほか、小米・华为・中兴・小鹏の関係者が入っています(IT之家、2026年2月28日)。主要な量産メーカーの経営者が標準づくりの中に入っている点は、日本企業が中国の標準を読むときに押さえておくべき事実です。

2026年2月28日には「人形机器人与具身智能标准体系(2026版)」が発表されました(科技日报、2026年3月1日)。120超の機関が策定に参加しています。

部対象工場導入との関係
基礎共通用語・分類・試験方法仕様書の用語を合わせる基準
脳型知能計算AIモデル・計算基盤認識・判断の性能評価
四肢部品関節・手・センサー部品の互換性・調達
整機システムロボット全体受入検査の基準
応用製造などの適用シーン工程への適用要件
安全倫理安全・倫理・管理人と同じ空間で動かす条件

同じ年次会議では、人形ロボットの身分(ID)管理の仕組みと、産業の安全な発展に関する2つの提言も発表されました。この論点は人形ロボットのID管理で扱います。

国内の人形ロボット整機メーカー数
140社超
工信部データ(2025年、新华社2026年3月2日報道)
発表された人形ロボット製品数
330超
同上
標準体系2026版の策定参加機関
120超
科技日报(2026年3月1日)

工場導入を考える企業にとっての意味

中国の政策は、標準ができる前に量産と工場投入を進め、走りながら標準を整える順序をとっています。これは日本企業にとって2つの意味があります。

1つ目は、中国製ロボットの仕様が中国の標準体系に沿って揃っていくことです。中国工場でロボットを調達する場合、受入検査や安全評価の基準として中国標準が使われる場面が増えるとみられます(推測)。

2つ目は、安全規格の扱いです。欧米ではISO 10218(産業用ロボットの安全)の改訂や、ヒューマノイド固有の安全規格の議論が進んでいます(ヒューマノイドの安全規格ギャップを参照)。中国の標準体系が「安全倫理」を独立した部として持つことは確かですが、具体的な要求事項が国際規格とどこまで整合するかは、個別の規格が出てから確認する必要があります。

よくある質問

標準体系2026版に強制力はありますか

標準体系は、今後策定する個別標準の全体設計を示したものです。個々の標準が国家標準として強制されるか、推奨にとどまるかは、個別の標準ごとに確認する必要があります。

日本企業は中国の標準化に参加できますか

委員会の名簿に載っているのは主に中国の企業・研究機関です。外資企業の参加の可否は今回の出典では確認できていません。中国法人を通じた業界団体への参加などを個別に確認するのが現実的です。

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この特集について

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。