3社を同じ軸で並べる

3社の公開情報を、量産・財務・工場顧客の3軸で並べると次のようになります。数字はいずれも出典に記載された時点のもので、企業発表を含みます。

軸智元机器人(AgiBot、上海)宇树科技(Unitree、杭州)银河通用(Galbot、北京)
工場向けの主力機精灵G2(2025年10月16日発表)。7自由度の力制御アーム、バッテリー2本のホットスワップ人形ロボットと四足ロボット。低価格機R1は5900ドルとされるGalbot G1/S1。車輪型の双腕人形ロボット
量産体制均普智能との合弁「普智机器人」(2025年4月設立)。最初のラインは年1000台規模、2025年8月末までに約200台生産公開資料からは工場向けの量産ラインの詳細は確認できない2025年のG1出荷1200台超
財務非上場。資金調達額は今回の調査範囲外2026年3月20日に科創板IPOが受理。収益は2024年3.92億元→2025年約17億元、主業粗利率59.45%2025年6月に11億元調達(宁德时代の戦略投資部門が主導)。評価額200億元超
工場の顧客・案件龙旗科技(タブレットライン、約1000台のフレーム契約、数億元)、均胜电子(1億元超、約1000工程が候補)工場向けの大口案件は今回の出典では確認できない宁德时代の電池工場で約100台が24時間稼働。2026年9月に宁德时代から2.36億元を受注
2025年出荷(参考)5168台(Omdia)4200台(Omdia)/5500台超(中国电子报の報告)個別の第三者推計は確認できない

智元:自社の量産ラインと電子・自動車部品の大口契約

智元の工場向け戦略は、工業用に設計した機種(精灵G2)と、量産を担う合弁会社をセットで持つ点に特徴があります。精灵G2は対話機能を持ち、7自由度の力制御アームで組立や部品の扱いを想定しています(21世纪经济报道、2025年10月17日)。

顧客側では、電子機器受託製造の龙旗科技がタブレットのラインに約1000台を導入するフレーム契約を結び、金額は数億元とされます(界面新闻、2025年10月9日)。自動車部品の均胜电子とは1億元超の契約で、自社工場の約1000工程が精灵G2の候補になるとされています。ただし、どちらもフレーム契約や候補工程の数であり、実際に稼働している台数ではありません。

宇树:収益と粗利で先行し、上場で資金を得る

宇树は3社のなかで財務情報が最も詳しく開示されています。IPO申請資料によれば、収益は2024年の3.92億元から2025年に約17億元へ伸び、2025年1〜9月の人形ロボット比率は51.53%、主業粗利率は59.45%です(同花顺、2026年3月20日)。

高い粗利率は、研究・教育・エンターテインメント向けを含む幅広い販売から得ていると考えられます(推測)。工場向けの大口案件は、今回参照した出典では確認できませんでした。工場で使うことを前提に比較する場合、宇树は「量産と価格で先行するが、工場の稼働実績は公開情報が少ない」と位置づけるのが妥当です。

银河通用:電池工場という具体的な現場を持つ

银河通用は、工場での稼働場所が最も具体的に報じられている会社です。宁德时代(CATL)の電池工場でGalbot S1約100台が24時間稼働しており、2026年9月には宁德时代から2.36億元の調達案件を受注したと報じられています(虎嗅、2026年9月29日)。

技術面では、シミュレーションで作った合成データで学習した把持モデルGraspVLAなど、VLA(視覚・言語・行動)モデルを自社で開発しています。2025年6月には博世系の博原资本と工業向けの合弁会社を設立しました(新华网、2025年6月23日)。同社は顧客として博世と丰田(トヨタ)も挙げていますが、これは同社の開示ベースです。

日系工場が比較するときの判断軸

3社の違いは、そのまま工場側が確認すべき項目になります。

発表・契約・稼働の3段階と3社の位置 発表・計画機種の仕様量産能力の計画出荷台数の推計 契約智元:龙旗・均胜(フレーム契約・候補工程)银河通用:宁德时代2.36億元 現場での稼働银河通用:電池工場約100台・24時間(作業内容の詳細は非公表) 右に行くほど導入判断の根拠として強いが、公開情報は少ない
工場向け人形ロボットを比較するときの3段階。発表・契約・稼働の順に信頼度が上がる。
  • 作業の種類:智元の精灵G2は力制御アームで組立寄り、银河通用は車輪型で搬送・ピッキング寄りと読めます。自社の工程が二足歩行を必要とするかをまず確認します
  • 連続稼働の条件:バッテリーのホットスワップや自律交換の有無は、24時間稼働の可否を左右します
  • 財務の持続性:保守・部品供給を5年以上受けられるかは、上場の有無や収益構造で見当をつけます
  • 稼働データの開示:契約額ではなく、自社と同じ工程での稼働時間・サイクル・停止頻度を開示してもらえるかを確認します

宁德时代の電池工場での品質管理の全体像は宁德时代のAI品質管理で、出荷台数の出典ごとの違いは2025年人形ロボット出荷ランキングで扱っています。

よくある質問

3社のうち工場での稼働実績が最も具体的なのはどこですか?

公開情報で見る限り、宁德时代の電池工場で約100台が24時間稼働していると報じられた银河通用です。ただし、宁德时代は同社の出資者でもあるため、第三者の顧客での実績とは分けて評価する必要があります。

宇树は工場向けに使えないのですか?

使えないわけではありませんが、今回参照した出典では工場向けの大口案件や稼働実績を確認できませんでした。研究・教育向けを含む販売で収益を伸ばしている段階と見るのが妥当です。

フレーム契約の「約1000台」はどう読めばよいですか?

フレーム契約は、今後の発注の上限や枠を決める契約で、全量の納入が確定したものではありません。実際の発注・納入・稼働の台数は別途確認が必要です。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。