Walker S2の量産開始と発表された数字

UBTech(优必选、深圳)は2025年11月17日、工業向け人形ロボットWalker S2の量産・出荷開始を発表しました。同社の発表による主な数字は次のとおりです。

Walkerシリーズの2025年受注額
8億元超
UBTech発表(2025年11月)
2025年中の納入目標
500台
同上
2026年の生産能力計画(2027年は年1万台)
年5,000台
同上

協業先・顧客として、BYD(比亚迪)、東風柳州汽車(东风柳汽)、吉利、一汽VW青島、アウディ一汽、北汽新能源、Foxconn(富士康)、SF Express(顺丰)を挙げています。Walker S2はバッテリーを自律交換でき、7日×24時間の稼働が可能とされています。

それ以前にも、Walker S1をBYDとNIOの生産工程(組立・品質管理)に組み込み、人と並行して作業させた実績が報じられています(heise online、2025年)。2024年には自動車会社だけで約500台のWalker S1の受注があったとも報じられました。

受注8億元の中身を分解する

受注額は時点によって積み上がっており、中身には工場の作業以外の案件が含まれます。報道から確認できる内訳を時系列に並べます。

時点受注累計・案件用途出典
2025年9月国内大手企業1社と2.5億元の契約。同社は人形ロボットの単一契約として世界最大と説明非公表深圳新闻网
2025年自貢のデータ収集センター向け1.59億元データ収集AI Business
2025年10月累計6.3億元超。広西の具身データ収集センター1.26億元を含むデータ収集を含むTechNode
2025年11月累計8億元超自動車工場ほかUBTech発表
UBTechのWalker受注8億元超のうち、データ収集センター向け案件と工場作業向け・非公表案件が混在していることを示す図 2025年の受注累計 8億元超(UBTech発表) 大手1社 2.5億元 自貢データ収集1.59億元 広西データ収集1.26億元 その他(内訳非公表) 用途非公表の大口契約 データ収集センター向け(約2.85億元) 自動車工場等を含むその他 各案件額は別々の報道から。合算は概算で、時点の違いにより正確な内訳ではない
Walkerシリーズの受注の構成(公開情報から確認できる範囲)。工場作業向けとデータ収集向けが混在している。

公開されている案件だけでも、データ収集センター向けが約2.85億元あり、受注累計の3分の1を超えます。データ収集センターは、ロボットを使って学習用の動作データを集める施設で、工場の生産作業とは目的が違います。中国では具身智能(エンボディードAI)の学習データ整備が政策的にも推進されており、こうした案件が受注を押し上げている面があります。

出荷台数の数字も調査によって違う

2025年のUBTechの人形ロボット出荷台数は、出典によって大きく異なります。Omdiaは約1,000台(世界3位)、中国电子报の報告は約600台、UBTech自身は2025年中の納入目標を500台としていました。世界全体でもOmdiaは約1.3万台、中国电子报は1.45万台超で、首位の企業も違います。中国电子报の数字はベンダー提供記事経由の引用である点にも注意が必要です。

自動車工場での実態をどう見るか

BYD、吉利、一汽VWなど自動車メーカーとの協業は、少なくとも工場の工程での実証・導入が行われていることを示しています。一方で、公開情報で分かる作業内容は「組立・品質管理工程で人と並行作業」といった粒度にとどまり、どの工程で何台が何時間稼働しているかは分かりません。

背景には中国の政策があります。2026年1月の「人工智能+制造」専項行動の実施意見は、「人形ロボットの中試基地と訓練場を建設し、人形ロボットの標杆生産ラインを作り、典型的な製造シーンで率先して応用する」としています。政策が実証の場を開放し、地方政府が補助金とシーン開放で支援する構図が、自動車工場での導入を後押ししています。政策の仕組みは中国の人型ロボット政策で扱います。

日本企業にとっての意味

中国に工場を持つ日本企業にとって、Walker S2のような中国製ヒューマノイドは、取引先の自動車メーカーの工場で目にする機会が増える可能性があります。評価の際は、中国の発表の数字を用途別に分解し、自社の工程に近い作業で実測することが基本です。

3点目は特に重要です。ロボットが工場内で撮影した映像や作業データは、中国のデータ分類分級の規制の対象になりえます。日系工場のデータの扱いは中国データ越境規定と日系工場を参照してください。UBTechの工場導入の別の角度からの解説は优必选Walker S2の工場導入にあります。

よくある質問

Walker S2は日本で購入できますか

本記事の調査では、日本での販売・保守体制を一次情報で確認できていません。個別に問い合わせる必要があります。

受注8億元はどれくらいの台数ですか

単価と内訳が公開されていないため、台数に換算できません。データ収集センター向けなど、工場作業以外の案件も含まれています。

自律バッテリー交換は工場でどんな意味がありますか

充電待ちで作業が止まらないため、連続稼働が求められる工程で有利です。Hexagon AEONや智元の精灵G2も交換式バッテリーを採用しており、工業向けヒューマノイドの共通の設計になりつつあります。

この記事に出てくる用語

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。