cotomiの現在地:長文対応・MCP準拠・オンプレ方針

cotomiは、NECが自社開発した生成AI(大規模言語モデル)です。2023年12月15日に名称が発表され、その際に基盤モデルの上に金融・自治体・医療・製造などの業種特化モデルを構築する計画が示されました(クラウドWatch、2023年12月)。

2025年7月8日には性能強化(社内呼称v3)が発表され、次の点が示されました(クラウドWatch、2025年7月)。

項目内容
コンテキスト長最大128K(一度に扱える入力の量。長い仕様書や複数文書をまとめて渡せる)
エージェント性能向上したと説明
MCP準拠(AIを外部システムにつなぐ標準プロトコル)
提供形態オンプレミス利用にも対応する方針
製造業向けの連携NECのPLM「Obbligato」に生成AI連携機能を搭載

同じ発表では、cotomiを使ってクラフトビールの商品開発プロセスを自動化し、開発工数を約40%削減したと説明されています。これはNECの説明による事例で、比較条件の詳細は示されていません。また商品企画の事例であり、工場の生産現場での事例ではありません。

製造業がcotomiを選ぶ理由になりうる3点

製造業でcotomiが候補に挙がる理由は、性能の高さよりも、データの扱い方と既存システムとの関係にあります。

  1. オンプレミスで動かせる方針:図面、製造条件、品質不具合の記録など、社外に出したくない情報を扱う業務では、自社の環境内でLLMを動かせることが前提条件になります。ローカルLLMの考え方はローカルLLMのオンプレ運用で詳しく扱っています。
  2. MCP準拠:設備データや業務システムをMCPサーバーとして公開すれば、cotomiから呼び出せます。特定の製品に縛られずにエージェントを組める可能性があります。
  3. PLMとの連携:Obbligatoを使っている企業にとっては、設計・部品データと生成AIをつなぐ入り口が製品側に用意されていることになります。

一方で、国産モデルを使う理由を「国産だから安全」とだけ考えるのは不十分です。オンプレミスで動かしても、アクセス権限の設計、ログの管理、プロンプトインジェクション対策は別に必要です。

社内ネットワーク内にcotomiを置き、MCPサーバー経由でPLM、MES、文書管理につなぎ、利用者が社内端末から使う構成 社内ネットワーク(オンプレミス) 利用者設計・品質・保全 cotomi権限・ログ管理 MCPサーバー → PLM(Obbligato等) MCPサーバー → MES・品質記録 MCPサーバー → 文書管理
cotomiを工場で使う場合の構成例。オンプレ環境内でLLMとMCPサーバーをつなぐ。

公開事例が少ないことをどう扱うか

2026年10月時点で、cotomiを工場の生産・品質・保全業務に使った公開事例は限られています。製造業向けの業種特化モデルの計画は2023年に示されましたが、その性能や提供状況を示す一次情報は本記事の参照資料では確認できませんでした。

公開事例が少ないこと自体は、選定から外す理由にはなりません。ただし、他社の事例を判断材料にできないぶん、自社での評価の比重が大きくなります。次の点を自社の文書とデータで確かめてください。

評価項目確かめ方
日本語の技術文書の理解自社の作業手順書・品質報告書から評価用の質問を30〜50問作り、正答率を測る
長文の扱い128Kの範囲で、仕様書の後半に書かれた条件を正しく拾えるかを確認する
数値の正確さトルク値・温度・公差など、手順書に書かれた数値を正しく引用するか
ツール呼び出しMCP経由でMESや文書管理から正しくデータを取ってくるか
推論ハードウェアオンプレで動かす場合のGPU構成と応答速度

国産LLMの選択肢の中での位置づけ

国産LLMの選択肢は広がっています。富士通はTakaneをソブリンクラウドに対応させ、PFNは2026年10月にPLaMo 3.0 PrimeをMicrosoft Foundryで企業専用の閉域環境向けに提供開始しました。NECは国産フィジカルAI基盤モデルを開発するNoetraの中核出資企業の一社でもあります(ITmedia ビジネス、2026年10月)。

製造業がこれらを比べるときは、「国産かどうか」より、どこで動くか(オンプレ、国内クラウド、海外クラウドの閉域)、自社の業務システムとどうつながるか、評価用データでの正答率、の3点で並べるのが実務的です。主要モデルの比較は日本語LLMの比較で扱っています。

よくある質問

cotomiは無償で試せますか?

試用の条件は本記事の参照資料では確認できていません。NECに問い合わせる際は、オンプレミス版とクラウド版の両方について、評価用環境の提供条件を確認してください。

128Kのコンテキストがあれば、RAGは不要ですか?

不要にはなりません。128Kでも工場の全手順書を一度に渡すことはできず、毎回大量の文書を渡すと応答時間と費用が増えます。関連する文書を検索で絞り込むRAGと組み合わせ、長文対応は「1件の長い仕様書を丸ごと読ませる」用途に使うのが現実的です。

製造業向けの業種特化モデルはもう使えますか?

2023年12月に計画が示されましたが、製造業向けモデルの提供状況を確認できる一次情報は参照資料にありませんでした。提案を受ける際に、汎用モデルとの違いと評価結果の提示を求めてください。

この記事に出てくる用語

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。