Industrial AI AssistantはCONNECT上の対話型インサイト機能

AVEVAは英国の産業ソフトウェア企業で、Schneider Electricの傘下にあります。旧OSIsoftのPI System(プラントのヒストリアン)を持つことから、プロセス産業を中心に多くの工場の時系列データを握っています。

同社は2025年4月のAVEVA World 2025(サンフランシスコ)で、クラウド基盤CONNECT上の「Industrial AI Assistant」を紹介しました。現場や技術者が自然言語で質問し、CONNECTに集めた運転データから洞察を得る対話型の機能です。同じ場では、配管設計への生成AI適用でプロジェクト立ち上げ時間を最大70%、設置コストを15%減らせるとAVEVAは主張しています(ARC Advisory Group、2025年4月)。この数字はAVEVAの主張で、対象案件や比較条件は示されていません。

2026年6月4日には、エージェント型AIで分散したデータソースを標準データモデルにマッピングする「ツインビルダー」と、産業ナレッジグラフを発表しました。ナレッジグラフは2026年にアーリーアクセス、CONNECTの大型リリースは2027年第1四半期の予定とされています(AVEVA発表)。

OTデータをAIへ渡す3つの方式

AVEVAが打ち出しているのは、OTデータをデータ基盤へ丸ごとコピーせずにAIや分析で使える構成です。現時点で公表されている方式は3つあります。

方式仕組み向く用途注意点
Databricks連携CONNECT Data Services(旧AVEVA Data Hub)とDatabricksをDelta Sharingで接続機械学習モデルの学習、大量データの分析Databricks側の計算費用が別にかかる
Snowflake連携OTデータをコピーせずにSnowflakeから照会ERP・販売データと合わせたBI・集計照会の頻度と量で費用が変わる
CONNECT Flows(旧Crosser)エッジやストリームでデータを加工・分析リアルタイムの監視・アラート、前処理長期の学習データ蓄積は別の仕組みが要る
PI Systemなどの現場データがCONNECTに集まり、Databricks、Snowflake、CONNECT Flowsの3方向へ渡される構成図 PI SystemSCADA・設備 AVEVA CONNECTData ServicesIndustrial AI Assistant DatabricksDelta Sharing・ML学習 Snowflakeコピーせず照会・BI CONNECT Flowsストリーム分析・前処理
AVEVA CONNECTを中心にした3つの連携方式。用途に応じて分析先を選ぶ。

「コピーしない」ことの利点は、データの二重管理を避け、タグの定義やアクセス権を一か所で管理できる点です。一方で、照会のたびに元データへアクセスするため、大量の学習処理を繰り返す用途では、結局どこかに学習用のデータセットを切り出すことになります。用途ごとに方式を選ぶのが現実的です。

生成AIに渡す前に整えるべきこと

Industrial AI Assistantのような対話型AIが正しく答えるには、時系列データの「意味」が分かる必要があります。PI Systemのタグ名が「FIC101.PV」のような略号だけで、どの設備のどの測定値かという情報(アセット階層)が整っていないと、AIは質問とデータを結びつけられません。AVEVAがツインビルダーでデータソースを標準モデルにマッピングする機能を出してきたのも、この課題への対応です。

現場で多いのは次の問題です。

  • タグの命名規則が工場やライン、年代ごとに違う
  • 単位や工学値の範囲がタグ属性に入っていない
  • 設備の更新でタグが変わったのに、履歴との対応が残っていない
  • ヒストリアンの圧縮設定で、異常時の細かい変化が記録されていない

これらはAI製品を入れても自動では解決しません。アセット階層の整備は、CONNECTを使う場合でも使わない場合でも、AI活用の前提作業です。データレイクやレイクハウスとの関係はデータレイクとレイクハウスの選び方、工場データを生成AIで扱う全体像は工場データを生成AIで使うを参照してください。

2027年までの製品再編に注意する

Schneider Electricは2026年6月にCogniteの買収を発表し、CogniteのデータプラットフォームとAtlas AIをCONNECTに統合する計画です。AVEVAはCrosserを買収済みで、TwinThreadの買収も保留中とされ、調査会社Verdantixは製品の重複整理を課題に挙げています(2026年7月)。ナレッジグラフのアーリーアクセスと2027年第1四半期の大型リリースを控え、機能名や契約体系が変わる可能性があります。

よくある質問

PI Systemをオンプレミスで使っていてもCONNECTは使えますか?

CONNECTはクラウド基盤で、オンプレミスのPI Systemからデータを送って使う構成が一般的です。送るデータの範囲と頻度、通信経路のセキュリティを設計する必要があります。

「データをコピーしない」ならクラウドに送らなくて済みますか?

いいえ。コピーしないのはCONNECTからDatabricksやSnowflakeへの受け渡しの部分で、現場のデータをCONNECTに集める段階ではクラウドへ送ります。社外にデータを出す前提で、機密区分を決めておく必要があります。

70%削減などの数字は参考になりますか?

AVEVAが配管設計への生成AI適用について示した数字は同社の主張で、対象案件や比較条件が公開されていません。自社の効果見積もりには使わず、小規模な検証で確認してください。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。