2Dで写らない不良は3D計測で捉える

2Dの外観検査は、欠陥部分の明るさや色の違いを画像として捉えます。ところが、表面の色が均一なワークの浅いへこみ、部品の浮きや高さの不足、平面度や反り、溶接ビードの高さや幅は、明るさの差としては写りにくい不良です。ローアングル照明で影を作る方法もありますが、ワークの高さが変わると影の出方も変わり、安定しません。

3D計測は、ワークの表面の各点の高さ(距離)を直接測ります。得られるのは画像ではなく高さの分布(高さマップや点群)で、凹凸や寸法を数値として扱えます。外観検査AIと組み合わせると、高さの分布から良品と違う形状を異常として検出したり、溶接ビードの断面形状を判定したりできます。

3つの計測方式

方式仕組み向く対象注意点
レーザ変位計(光切断)ライン状のレーザを当て、反射位置のずれから断面形状を測る。ワークかセンサを動かして面を作る溶接ビード、シール剤の塗布、端面の段差ワークかセンサの移動が要る。鏡面や黒色は反射が不安定
ステレオカメラ2台のカメラの視差から距離を求める比較的大きな凹凸、部品の有無と位置模様のない面は対応点が取りにくく精度が落ちる
パターン投影(構造化光)縞などのパターンを投影し、歪みから形状を求める静止したワークの面全体の形状撮像中にワークが動くと計測できない

どの方式でも、測定の分解能(どの程度の高さの差を見分けられるか)と、1回で測れる範囲はトレードオフになります。検出したい最小の凹凸の大きさと、検査する範囲の広さから方式とセンサを決めます。

2D画像と3D高さプロファイルの比較 2D画像(明るさ) 浅いへこみは周囲と同じ明るさで写りにくい 3D計測(高さ) へこみ 高さの差として数値で捉えられる
2Dと3Dで得られる情報の違い。2Dは明るさの分布、3Dは高さの分布として不良を捉える。

ロボットで撮像位置を動かす構成

大きなワークや複雑な形状のワークでは、センサを固定したままでは全面を測れません。そこで、3Dセンサをロボットの先端に取り付け、検査する位置へ順に動かしながら計測する構成が使われます。外観検査用のデータセットでも、1視点では見えない欠陥があるため複数の視点から撮影する設計が取られています(Real-IADは真上1台と約45度の4台、計5視点)。

国内の事例として、リンクウィズのインライン向け3Dロボット検査システムL-QUALIFYがあります。同社の公開事例では、自動車シートのタチエスが0.1mm単位のレーザ溶接検査をロボット化し、受注生産モータの東芝三菱電機産業システムが出荷検査をロボット化して検査時間を人の約半分にしたとされています(いずれもリンクウィズ公式サイトの事例紹介、2026年10月閲覧)。数字は同社の発表で、対象製品と検査項目は各事例に限られます。

ロボットを使う構成では、ロボットの位置の再現性と、ワークの置き位置のばらつきが計測結果に影響します。ワークの位置ずれをロボット側で補正する仕組み、またはワークの実際の位置を計測してから検査位置を決める仕組みが必要です。ロボットで撮像を担う構成の全体像は検査ロボット×AIでも整理しています。

3DデータをAIに入れるときの注意

3D計測のデータは、高さマップ(各画素が高さを持つ画像)か点群(3次元座標の集合)で得られます。高さマップは2Dの画像と同じ形なので、2Dの異常検知手法をそのまま当てやすいのが利点です。点群は情報量が多い一方、扱える手法とツールが限られます。

注意点は3つあります。1つ目は欠測で、鏡面や黒色、急な斜面ではレーザや投影光が戻らず、高さが取れない点が出ます。欠測を不良と誤判定しないよう、欠測の扱いを前処理で決めておきます。2つ目は位置合わせで、ワークの傾きや位置ずれは高さの差として現れるため、基準面を使った補正が要ります。3つ目は良品のばらつきで、ワークの反りや公差内の寸法ばらつきを異常と判定しないよう、良品の形状のばらつきを学習データに含めます。

2Dと3Dの使い分け

方式の選択は、欠陥の性質から決めます。

  • 色・汚れ・変色・印字:2D
  • 平面上の傷・打痕(照明でコントラストが出る場合):2D
  • 浅いへこみ・膨らみ、高さ・段差・平面度・反り:3D
  • 溶接ビードの高さ・幅・断面形状、シール剤の塗布量:3D(レーザ変位計が多い)
  • 部品の有無・浮き:2Dで足りる場合が多いが、浮き量を測るなら3D

3D計測は2Dよりセンサと処理の費用がかかり、計測にも時間がかかります。2Dの照明の工夫で写るなら2Dで済ませ、写らない欠陥に絞って3Dを使うのが費用対効果の高い進め方です。照明の工夫の余地は外観検査AIの撮像・照明設計を、溶接への適用は溶接外観検査AIを参照してください。

よくある質問

3D外観検査はタクトに間に合いますか?

レーザ変位計はワークかセンサの移動が必要で、検査範囲が広いほど時間がかかります。ロボットで複数の位置を測る構成では、移動時間も加わります。タクトが短いラインでは、検査範囲を不良の出やすい箇所に絞るか、センサを複数台にして並列で測る設計にします。

3Dの高さマップに2Dの異常検知手法は使えますか?

高さマップは画像と同じ形式のため、2Dの良品学習手法を当てて検証することはできます。ただし事前学習済みのモデルは通常のカラー画像で学習されているため、高さマップで同じ精度が出るとは限りません。自社データでの比較が必要です。

3Dセンサの結果を寸法検査にも使えますか?

高さや段差の寸法は3D計測から直接求められるため、規格値との比較はルールで判定できます。寸法はルール、形状の異常はAIと役割を分けると、判定の根拠を説明しやすくなります。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。