古い設備でもデータは取れる

設備が古くてもAIに使うデータは取れます。方法は大きく4つあり、設備の制御装置(PLC)に触るかどうかで分かれます。PLCに触らない方法は、設備メーカーの保証や制御プログラムに影響を与えずに始められるのが利点です。

方法取れるデータ分かることPLCへの影響
1. 後付けセンサー(振動・温度・音)振動波形、表面温度、音回転機の劣化、過熱、異音なし
2. 電流センサー(クランプ式CT)モーターや設備の電流波形稼働・停止・待機、負荷の変化、一部の機械的異常なし
3. カメラ表示灯・メーター・製品の画像稼働状態、計器の値、外観の良否なし
4. PLCゲートウェイPLC内部の信号(運転、異常、カウンタ、設定値)稼働実績、停止理由、生産数、加工条件読み出しのみなら小さい

方法1・2:センサーと電流計で状態を測る

回転機(モーター、ポンプ、ファン、減速機)の劣化を見るなら、振動センサーが基本です。軸受の劣化は振動の特定の周波数に表れます。注意点はサンプリングの速さで、軸受の診断研究で使われるCWRUデータは加速度を12kHzと48kHzで記録しています。1秒に1回の値では、こうした高周波の特徴は取れません。

電流センサー(クランプ式の変流器)は、配線を切らずに電線を挟むだけで付けられ、後付けしやすい方法です。電流の大きさから、設備が加工中か、待機中か、停止中かが分かり、稼働率の見える化にすぐ使えます。電流波形を細かく分析するMCSA(モーター電流シグネチャ解析)では、回転子の異常や軸受の異常を捉える研究もあります。温度は変化が遅いため、潤滑不良や過負荷の補助的な指標として使います。

方法3:カメラで表示灯・メーター・製品を読む

制御盤の表示灯(シグナルタワー)をカメラで撮れば、稼働・停止・異常の状態を記録できます。アナログメーターの針を画像で読む方法もあり、ダイキン工業は2026年8月、無線IoTカメラとAIでアナログメーターを自動で読み取るLiLzに出資し、設備点検から空調・熱源設備の運用改善までの工場向けソリューションを共同開発すると発表しています。製品を撮れば、そのまま外観検査のデータにもなります。

方法4:PLCゲートウェイで信号を読み出す

古いPLCでも、シリアル通信や独自プロトコルで内部の信号を読み出せる場合が多くあります。PLCの通信を、OPC UAやMQTTといった現在の標準プロトコルに変換するゲートウェイを置くと、稼働・停止・異常コード・生産数を上位のシステムに送れます。OPC UAは通信だけでなく情報の型や単位を持てるのが特徴で、設備をまたいで同じ形でデータを扱いやすくなります。

古い設備に付けた振動センサー、電流センサー、カメラ、PLCゲートウェイからエッジゲートウェイを経由してデータ基盤に集め、MESのロット情報と紐付ける構成図 古い設備 1 振動・温度 2 電流センサー 3 カメラ 4 PLC読み出し エッジゲートウェイ データ基盤 MES・日報ロット・品番作業指示 時刻を合わせて紐付ける
後付けの4つの方法から、ゲートウェイを経由してデータ基盤に集める構成例。ロット情報との紐付けが鍵になる。

失敗しないための3つの注意点

後付けでデータを取るときの失敗は、センサーの選び方より、データの扱い方で起きることが多いです。

1つ目は時刻です。センサー、カメラ、PLCゲートウェイの時計がずれていると、どのデータがどの製品のときのものか分からなくなります。機器の時刻をネットワークで同期させる設定(NTP)を最初に入れてください。

2つ目はロット情報との紐付けです。振動や電流の値だけでは、どの品番を作っていたときの値か分かりません。品番によって負荷が違う設備では、品番を知らずに異常を判定すると誤報が増えます。MESがなくても、作業日報の着手・完了時刻と品番をデジタルで記録すれば紐付けられます。

3つ目は命名です。センサーごとに名前の付け方がばらばらだと、台数が増えたときに管理できなくなります。工場・ライン・設備・測定項目の順で名前を付けるなど、規則を先に決めます。詳しくはタグ命名規則で扱っています。

よくある質問

古いPLCからデータを取るには設備メーカーの協力が必要ですか

読み出すアドレスや通信設定を知るために、設備メーカーや当時のSIerの資料が必要になることが多いです。資料がない場合は、PLCに触らない電流センサーやカメラから始め、並行して資料を探すのが現実的です。

振動センサーはどの設備に付けるべきですか

止まると損失が大きく、壊れ方が回転部の劣化(軸受、ギア、ベルト)である設備が優先です。故障モードが振動に表れない設備(電気系の故障が中心など)では、電流や温度の方が向いています。

後付けセンサーのデータだけで予知保全はできますか

異常検知までは可能です。故障の種類まで判定するには、アラームと実際の保全記録を照合して正解を貯める必要があり、センサーだけでなく保全記録の整備が欠かせません。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。