2026年に示された政策の全体像

2026年は、日本のロボット・フィジカルAI政策が大きく動いた年です。主な決定と数字を時系列で並べます。

時期内容出典
2026年3月「AIロボティクス戦略」を取りまとめ。米中に並ぶ「第三の極」として世界シェア3割を目指すRIETI BBL資料(2026年6月)
2026年6月24日成長戦略会議で、フィジカルAIに2040年度までに官民で10.5兆円を投じる計画を提示(17戦略分野全体では370兆円規模)MONOist(2026年6月27日)
2026年6月30日経済産業省が、NEDO「AIロボット・フィジカルAIを見据えたマルチモーダル基盤モデル開発事業」の実施者としてNoetraと産総研を発表@IT(2026年9月11日)
2026年度経産省とNEDOが同プロジェクト全体に約3,873億円を支援。5年間の総額は1兆円規模になる可能性ITmedia ビジネス(2026年10月5日)
2026年9月16日NEDOがフィジカルAI Summitで「国産汎用ロボット開発コンペティション」の成果を初公開NEDO公式サイト

政府は2040年にAIロボットの売上高約20兆円、世界シェア30%超を目標に掲げています(@IT、2026年9月)。AIロボティクス戦略の方向性は、現場データを使った基盤モデル開発、重点産業ごとの導入目標の設定、導入支援と規制整備の一体推進の3点です。

フィジカルAIへの官民投資計画(2040年度まで)
10.5兆円
成長戦略会議(2026年6月24日、MONOist報道)
基盤モデル開発プロジェクトへの2026年度支援額
約3,873億円
経済産業省・NEDO(ITmedia ビジネス、2026年10月)
Noetraへの国内出資企業数
44社
ITmedia ビジネス(2026年10月)

3つの系統に分けて読む

報道される数字の多くは、どの系統の予算かが混ざっています。対象者で分けると、自社との関係が見えます。

研究開発・データ基盤・導入支援の3系統と主な対象者 1. 研究開発(基盤モデル・汎用ロボット)NEDO基盤モデル開発事業、GENIAC、ロボット開発コンペ 2. データ基盤(現場データの整備)製造AX拠点構想、AIRoAのデータセット整備 3. 導入支援(設備投資・人材)省力化投資補助金、ものづくり補助金、税制など 対象:大企業・研究機関スタートアップ 対象:データ提供企業業界団体 対象:中小を含むユーザー企業
日本のフィジカルAI政策の3系統。上ほど大企業・研究機関向け、下ほど中小製造業も直接使える。

1. 研究開発:基盤モデルと汎用ロボット

中心はNEDOのマルチモーダル基盤モデル開発事業です。実施者のNoetraには国内44社が出資し、中核はソフトバンク、本田技研工業、NEC、ソニーグループの4社です。ファナック、安川電機、東芝、日本製鉄も出資企業に含まれます。2024年2月に始まったGENIACも、AIモデル開発とデータセット構築を支援しています。ユーザー企業がこの系統の予算を直接受け取る場面は少なく、成果の基盤モデルを将来使う立場になります。

2. データ基盤:現場データの整備

2026年版ものづくり白書は「製造AX拠点構想」を紹介しています。加工・稼働データから製造データベースを整え、それを使う製造プラットフォームの開発を支援する構想です。民間では、TelexistenceやトヨタなどがAIロボット協会(AIRoA)を主導し、データセット整備を進めています。製造業はここで「データの出し手」として関わる可能性があります。データを出す側のリターン設計は、RIETIの資料でも未解決の課題として挙げられています。詳しくはロボット学習データは誰が作るかを参照してください。

3. 導入支援:中小製造業が直接使える制度

ロボットやAIを自社工場に入れる費用に使えるのは、主にこの系統です。フィジカルAI専用の補助金ではなく、既存の省力化・設備投資の制度を使う形になります。

制度ロボット導入での使い方主な条件(2026年10月時点)
中小企業省力化投資補助金(一般型)現場に合わせたロボットセル、AI外観検査など最大1億円。補助率は1,500万円まで1/2(最低賃金引上げ特例は2/3)、超過分1/3。第8回は10月16日締切
同(カタログ注文型)カタログ登録済みのロボット製品最大1,500万円、補助率1/2以内。随時受付
新事業進出・ものづくり補助金新製品・新工程のための設備投資賃上げ要件あり。未達時は返還リスク

制度ごとの詳細は省力化投資補助金でAI外観検査・ロボットを入れると補助金以外の公的支援で扱っています。

規制整備は「これから」の段階

導入支援と並んで、規制の整備も政策の柱です。規制改革推進会議では歩行型ロボットの公道実証に向けた基準づくりが調整されていますが、工場内でAIが動かす機械の安全や事故時の責任分界は、まだ整理の途中です。@ITが2026年9月に整理したフィジカルAIの課題には、確率的なAIの安全保証、責任分界、既存の労働安全衛生法との不整合が挙がっています。

現場での安全・責任の論点はフィジカルAI・ロボットと労働安全衛生法で扱っています。

よくある質問

NEDOの基盤モデル開発事業に中小製造業が参加できますか

実施者はNoetraと産総研で、個別の中小製造業が直接受託する形ではありません。関わり方としては、データ提供や実証フィールドとしての協力が考えられますが、公募の有無は事業ごとに確認が必要です。

フィジカルAI専用の補助金はありますか

2026年10月時点で、中小製造業のロボット導入に使う主な制度は、省力化投資補助金やものづくり補助金など既存の制度です。フィジカルAIという名称の設備補助が新設されるかは、今後の予算編成を確認してください。

中国や米国の政策と比べて日本はどうですか

中国は2025年8月の「AI+」行動意見で製造業の全工程へのAI導入を掲げ、米国は2025年7月のAIアクションプランで90超の施策を示しています。日本はAIロボティクス戦略で「第三の極」を目指すとしています。中国の人型ロボット政策は中国の人型ロボット政策で扱っています。

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この特集について

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。