センサは「故障モード」から逆算して選ぶ

予知保全のセンサ選定で最も多い失敗は、センサを先に決めてしまうことです。「とりあえず振動センサを付けた」「温度は全部取っている」という状態から始めると、実際に起きている故障がそのセンサに現れるかどうかがわかりません。

正しい順序は、FMEA(故障モード影響解析)で重要設備の主要な故障モードを洗い出し、それぞれの故障がどの物理量に、どのくらい前から現れるかを考えて、センサを対応づけることです。状態監視プログラムの立ち上げ手順については、すべての機械に適用できる一般指針としてISO 17359:2018があり、この順序の考え方の拠り所になります。予知保全の導入手順全体では、これが対象設備を決めた直後の2番目のステップにあたります(予知保全AIとは)。

5種類のセンサと得意な故障モード

センサ得意な故障モード兆候の出る早さ注意点
振動(加速度)軸受の傷、アンバランス、ミスアライメント、緩み、歯車の損傷早い取付位置と固定方法で感度が大きく変わる。高周波を見るには高速サンプリングが要る
温度潤滑不良、過負荷、電気接続部の発熱遅い応答が遅く、異常がかなり進んでから上がる。周囲温度の補正が要る
電流回転子・巻線の異常、負荷側の詰まり・過負荷中程度盤側で後付けしやすい。軸受の初期傷には感度が劣る
音(マイク)異音を伴う機械的異常、エア漏れ、蒸気漏れ中程度周囲の騒音の影響を受けやすい。マイク位置の固定が前提
油(潤滑油の分析)摩耗粒子の増加、油の劣化、水分混入早い(摩耗型)オンラインセンサは高価。定期採取の分析と組み合わせることが多い

温度は応答が遅いため、単独では予知保全より「異常が進んだことの確認」に近い使い方になります。潤滑不良や過負荷の補助指標として振動や電流と組み合わせるのが一般的です。電流の詳細はモータ電流で予知保全(MCSA)、音は音で設備異常を見つけるAIで扱っています。

故障モードからセンサを決める4手順

保全記録の集計、FMEA、物理量の対応づけ、取付と周期の設計の4段階の流れ 1. 保全記録を集計停止回数・時間故障部位・現象 2. FMEAで評価影響度×頻度対象モードを絞る 3. 物理量に対応どの量に何日前から出るか 4. 取付と周期位置・固定・帯域電源・通信 保全記録で故障部位がコード化されていないと1から進まない
故障モードからセンサと取付を決める流れ。保全記録が出発点。
  1. 保全記録を集計する:過去3年程度の保全記録から、設備ごとの停止回数・停止時間・故障部位・現象を集計する
  2. FMEAで対象の故障モードを絞る:影響度(停止損失・品質・安全)と発生頻度で評価し、予知保全で狙う故障モードを決める
  3. 故障モードを物理量に対応づける:その故障がどの物理量に、どのくらい前から現れるかを、設備メーカーの資料や保全担当者の経験から整理する。複数の物理量に現れるなら、早く鮮明に出るものを主、もう一つを確認用にする
  4. 取付・周期・電源と通信を設計する:次の節で説明する項目を決める

1番目でつまずく工場が多いのが実情です。保全記録が自由記述で、故障部位や現象がコード化されていないと、どの故障が多いのかを集計できません。記録の整備方法は保全記録(CMMS)を予知保全AIの教師データにするで解説しています。

精度を左右する取付と周期の設計

同じセンサでも、取付と周期の設計次第で捉えられる異常が変わります。

取付位置は、狙う部位にできるだけ近く、信号が伝わる経路が短い場所を選びます。振動センサなら軸受箱の荷重方向、温度センサなら発熱部に近い表面です。振動センサの固定方法は、ねじ止めが最も高周波まで測れ、接着、マグネットの順に感度が落ちます。

サンプリング周波数は、見たい現象の周波数の2倍以上が理論上の下限で、実務ではさらに余裕を持たせます。軸受の初期傷を周波数分析で見るなら数kHz〜十数kHzの帯域が必要です。一方、温度の傾向を見るだけなら1分に1回でも十分です。

測定周期(連続か間欠か)は、劣化の進行速度と通信・電池の制約で決めます。数か月かけて進む摩耗なら1日数回のスナップショットで足りますが、数時間で進む故障を捉えるには連続監視が必要です。

電源と通信も現場では大きな制約です。有線は安定していますが配線工事の費用がかかります。無線センサは設置が容易な反面、電池寿命を保つために測定周期や測定時間が制限されます。最近はコマツ子会社のKELKが、温度差3℃で自己発電してLoRa通信(約500m)で送る振動センサを発表しており、電池交換の手間を減らす選択肢も出てきています。

よくある質問

センサは多く付けるほど精度が上がりますか?

上がるとは限りません。狙う故障モードに関係のないセンサを増やしても、データの保存と管理の手間が増えるだけです。故障モードごとに主と確認用の2種類程度に絞る方が、運用を続けやすくなります。

既存のPLCのデータだけで予知保全はできますか?

モータ電流、温度、圧力など、PLCがすでに取っているデータで傾向監視ができる故障モードもあります。ただしPLCのデータは制御のための周期で取られており、振動のような高周波の現象は捉えられません。まず既存データで何がわかるかを確認し、足りない部分にセンサを追加するのが経済的です。

防爆エリアの設備はどうすればよいですか?

防爆認証を取得したセンサを使う必要があり、選択肢と費用が限られます。盤側で電流を測る、定期的な携帯型測定器による巡回測定と組み合わせるなど、エリア外で取れるデータを優先して検討してください。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。