間欠需要は「いつ出るか」と「どれだけ出るか」に分ける

間欠需要とは、需要ゼロの期間が多く、たまに不規則な量の需要が発生するパターンです。製造業では、補修・保守部品、受注生産の専用部品、ライフサイクル末期の品目、少量多品種の特注品で多く見られます。

このような系列に通常の予測を当てると、ゼロと小さい値の平均のような予測(たとえば毎月0.3個)が出ます。この数字は実際には一度も起きない値で、発注の判断に使えません。間欠需要の予測では、需要が発生する確率(または間隔)と、発生したときの量を分けて考えるのが基本です。

4つの方法

方法考え方長所注意点
1. 発生間隔と量の分離(Croston系)需要の発生間隔と発生時の量を別々に平滑化する計算が軽く、多品目に一括適用できる需要の消滅(廃番)に追従しにくい
2. 分布で表す(確率予測)期間中の需要の確率分布(ゼロの確率を含む)を推定する発注点・サービス率に直結する分布の仮定が合っているか検証が要る
3. 集約してから予測月次・製品群など粗い粒度で予測し按分するゼロが減り、予測が安定する按分ルールで個別品目の精度が左右される
4. 原因から予測稼働台数・保守計画・設備の使用時間から部品需要を推定需要の理由を説明できる稼働・保全データの整備が前提

4つ目は、製造業ならではの方法です。補修部品の需要は、その部品を使う設備や製品がどれだけ稼働しているか、定期保全がいつ予定されているかで決まります。保全計画や設備の稼働時間(MESや保全システムにある)を使えれば、過去の需要系列だけを見るより根拠のある予測になります。

点予測ではなく発注点に直結させる

需要の発生確率と量の予測からリードタイム中の需要分布を作り、目標サービス率で発注点を決める流れ 発生確率の予測 発生時の量の予測 調達LT中の需要分布 目標サービス率 発注点・在庫量
間欠需要の予測から発注点を決める流れ。精度ではなく目標サービス率で評価する。

間欠需要の品目は、品目数が多い一方で1品目あたりの金額が小さいことが多く、1品目ずつ担当者が判断する運用は続きません。品目の振り分け、方法の選択、発注点の計算までを自動で回し、担当者は例外(急な需要の発生、廃番の連絡)の確認に集中する設計にすることが、運用を続けるための条件です。

間欠需要の予測で最終的に必要なのは、「調達リードタイムの間に、目標の確率で欠品しないために何個持つか」です。点予測の精度を追うより、リードタイム中の需要分布を推定し、目標サービス率(たとえば95%)から発注点を決めるほうが直接的です。在庫最適化全体は在庫最適化AIで扱います。

発注点の計算には、調達リードタイムの実績も必要です。補修部品は海外の部品メーカーから調達するものも多く、カタログ上のリードタイムと実際の入荷日数が大きく異なることがあります。購買システムの発注日と入荷日から、品目別のリードタイムの分布を集計して使ってください。

品目の重要度で目標サービス率を変えるのも有効です。ライン停止につながる保全部品は高く、代替品がある部品は低く設定します。全品目を一律の目標で管理すると、在庫金額が膨らむか、重要品目で欠品します。

保全データとつなぐ方法

補修部品の需要を原因から予測する場合、使うデータは主に次の3つです。

  • 設備の稼働時間・稼働回数:MESや設備の稼働監視から取得する。消耗部品の交換時期の目安になる
  • 保全計画:定期保全の予定日と交換予定部品。保全管理システム(CMMS)にある
  • 故障履歴:過去の故障で交換した部品と、そのときの稼働時間。保全記録から集計する

定期保全で交換する部品は、保全計画から需要がほぼ確定します。予測が必要なのは、突発故障で交換する部品です。これは、故障履歴から部品ごとの故障率を推定し、稼働中の設備台数と稼働時間を掛け合わせることで、期間中の需要の分布として推定できます。

この方法の前提は、保全記録に「どの設備で、どの部品を、いつ交換したか」が品番レベルで残っていることです。保全記録が自由記述だけで品番が入っていない工場は多く、まず記録の様式を整えることから始める必要があります。

評価指標も変える

Hewamalageらの予測評価の整理(arXiv 2203.10716、2022年)が指摘するとおり、MAPEは実績で割るためゼロや0に近い実績で壊れ、間欠需要には向きません。間欠需要では、次のような業務に近い指標で評価します。

  • 達成サービス率(欠品せずに出荷できた割合)
  • 在庫金額・在庫回転日数
  • 欠品件数と、欠品による停止・緊急手配のコスト
  • 予測精度を見るならスケール非依存のMASEや、分布の当たり具合を測る指標

指標の詳細は需要予測の精度指標を参照してください。

よくある質問

補修部品の需要予測にAIは必要ですか?

過去の需要系列だけを使うならCroston系などの統計手法で十分なことが多いです。AIが効くのは、設備の稼働時間や保全計画などの説明変数を組み合わせて予測する場合です。

発注点を決めるのに予測区間が必要なのはなぜですか?

発注点は平均ではなく、リードタイム中に需要がどこまで振れるかで決まるためです。平均だけでは、欠品確率をコントロールできません。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。