判断の軸は「登録品か、オーダーメイドか」と「目的」

用途から補助金を選ぶとき、最初に見るべき軸は2つです。

  1. 作り方:登録済みのツールや製品を買うのか、自社の工程に合わせて構築するのか
  2. 目的:既存業務の省人化・効率化か、新製品・新事業か

デジタル化・AI導入補助金は、登録された「IT導入支援事業者」を通じて登録済みのITツールを導入する制度で、受託開発や自社開発のAIは原則として対象にしにくい仕組みです。省力化投資補助金のカタログ注文型も登録製品が対象です。一方、省力化投資補助金の一般型は個別現場に合わせた設備導入・システム構築を対象としています(いずれも中小機構 補助金活用ナビ、2026年10月閲覧)。

AI投資の2軸と補助金の対応 新製品・新事業既存業務の省人化・効率化 登録品を買うオーダーメイド 新事業進出・ものづくり補助金(大型なら成長加速化補助金) 省力化投資補助金(一般型)AI外観検査・ロボットセル デジタル化・AI導入補助金省力化補助金(カタログ注文型)生成AI・AI-OCR・登録機器 登録品だけで新事業を作るケースは少ない計画の中身で制度を判断
作り方と目的の2軸で、候補となる補助金が分かれる。

6つのパターンと候補の補助金

#用途・パターン作り方第一候補次の候補
1生成AIの業務利用(文書作成、社内問い合わせ)登録済みのクラウドサービスデジタル化・AI導入補助金-
2紙の検査記録・点検表のAI-OCR登録済みのツールデジタル化・AI導入補助金-
3AI外観検査(自社ワークに合わせた撮像・判定)オーダーメイド省力化投資補助金(一般型)新事業進出・ものづくり補助金(新製品・新サービスにつながる場合)
4AI画像センサーなどの既製検査機器登録製品省力化投資補助金(カタログ注文型)デジタル化・AI導入補助金(ソフト部分が登録ツールの場合)
5予知保全・設備の状態監視後付けセンサー+クラウドなら登録品の場合あり、個別構築ならオーダーメイド登録品ならデジタル化・AI導入補助金個別構築は省力化(一般型)、大型の工場投資の一部なら成長加速化補助金
6AIで実現する新製品・新サービス(加工条件最適化による新材料対応など)オーダーメイド新事業進出・ものづくり補助金1億円以上の投資なら成長加速化補助金

表は制度の趣旨に基づく目安です。採択されるかどうかは事業計画の内容で決まり、対象経費の範囲は回ごとの公募要領で定められます。申請前に必ず最新の公募要領で確認してください。

パターンごとの注意点

生成AI・AI-OCR(パターン1・2)

導入したいツールが登録されているかを、IT導入支援事業者に確認するところから始めます。社内文書を使うRAG(検索拡張生成)を構築する場合、登録ツールの標準機能で足りるのか、個別の開発が必要なのかで扱いが変わります。個別の開発部分は対象外になりうるため、見積もりを分けてもらってください。

AI外観検査(パターン3・4)

既製のAI画像センサーで判別できる対象(型式の判別、有無の確認など)なら、登録製品で足ります。一方、微細な傷や形状のばらつきがある欠陥を検出するには、照明・撮像系と判定モデルを工程ごとに作り込む必要があり、省力化投資補助金の一般型が合います。どちらになるかは、撮像テストをしてから判断するのが確実です。

予知保全(パターン5)

予知保全は、後付けの振動センサーとクラウドの監視サービスを組み合わせる形なら登録品で済む場合があります。一方、既存のPLCやヒストリアンからデータを取り、設備ごとにモデルを作る場合は個別構築です。どちらの形でも、故障の記録(保全履歴)が残っていないとAIの効果が出にくいため、補助金の申請前に保全記録の整備状況を確認しておきます。

データ基盤への投資はどう扱うか

AIの前提になる設備データの収集やMES連携は、単独では補助金の評価軸に乗りにくい投資です。ただし、省力化や新製品につながるAI投資の「構成要素」として計画に入れれば、対象経費に含められる場合があります。例えば、AI外観検査の判定結果をMESのロットに紐付けるためのシステム連携は、省力化効果の測定と品質保証に必要な部分として説明できます。データ基盤とAIの関係はMESとAIの関係を参照してください。

よくある質問

自社開発したAIは補助金の対象になりますか

デジタル化・AI導入補助金では、登録ITツールが対象のため原則として対象にしにくいとされています。省力化投資補助金の一般型や新事業進出・ものづくり補助金では、外部への開発委託費やシステム構築費が対象経費に含まれる場合があります。社内人件費の扱いは制度ごとに異なるため、公募要領で確認してください。

1つの補助金でAIとロボットをまとめて導入できますか

省力化投資補助金の一般型や新事業進出・ものづくり補助金では、1つの事業計画の中でAIとロボットを組み合わせたシステムを申請する形が一般的です。対象経費の区分と上限は公募要領で確認してください。

AIの研修費用にはどの制度を使えばよいですか

設備向けの補助金ではなく、厚生労働省の人材開発支援助成金が候補になります。詳しくは人材開発支援助成金でAI研修費を賄う方法を参照してください。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。