中国EV工場のAIは「認定制度」と一体で進んでいる

中国では2025年から、工信部など6部門が智能工厂を基础级・先进级・卓越级・领航级の4段階で認定する「梯度培育」を進めています。「智能工厂梯度培育要求(2025版)」では、卓越級にAI応用シーン20%以上、領航級に60%以上が求められます(経済日報、2025年12月)。AIの導入率が補助金や表彰の要件として数値で定められている点は、日本のスマート工場施策にない設計です。

この基準の下で、上汽通用五菱は領航級に選ばれ、自社開発の運営大模型「EOAI」を使ってAI応用シーンの比率が75%を超えたと報じられています(新出行、2025年11月)。75%という数字は、基準の60%を上回ることを示すための指標で、工場の業務のうちAIを使うシーンの割合です。不良率や生産性の改善幅を示す数字ではありません。

上汽通用五菱のAI応用シーン比率(運営大模型EOAI)
75%超
新出行(2025年11月)
領航級智能工厂に求められるAI応用シーン比率
60%
智能工厂梯度培育要求2025版(経済日報、2025年12月)
UBTech Walkerシリーズの2025年受注額(累計)
8億元超
UBTech発表(2025年11月)

ヒューマノイド:BYD・NIOから量産出荷へ

UBTechはWalker S1をBYDとNIOの生産工程(組立・品質管理)に組み込み、人と並行して作業させた実績があり、2024年に自動車会社だけで約500台のWalker S1受注が報じられました(heise online、2025年)。2025年11月にはWalker S2の量産・出荷開始を発表し、2025年の受注は8億元超、協業先としてBYD、東風柳州汽車、吉利、一汽VW青島、アウディ一汽、北汽新能源、Foxconnなどを挙げています。

受注額の数字は時点で動いています。2025年9月に約4億元、10月に6.3億元超、11月に8億元超と報じられ、いずれも累計額です。10月時点の6.3億元には広西の具身データ収集センター1.26億元が含まれており、工場に配置されるロボットの台数と1対1では対応しません。

電池工場:宁德时代のAI検査と品質目標

EVの競争力を左右する電池では、宁德时代(CATL)の溧阳工場がカメラ8台とAI検査を組み合わせ、セル故障率を100万分の1から10億分の1に下げたと報じられています(中国証券報、2024年6月)。同社は2026年、約7000のスマート管理点とAIによる多段の閉ループ制御で9シグマの品質目標を掲げました。電池の詳細は電池製造のAIで扱っています。

日本の自動車工場と比べるときの3つの視点

視点中国EV工場日本の自動車工場
AI導入の動機認定制度の数値要件、補助金個別のROI、品質・人手不足対策
公表される数字AI応用シーン比率、受注額対象ライン限定の改善率
ヒューマノイド受注・量産出荷の段階実証・展示の段階
データ基盤運営大模型など全社統合を打ち出す工場・ライン単位の最適化が中心

上の比較は公開情報に基づく編集部の整理です。中国側の数字は政策目標と結びついて発表されるため、比率や件数で示される傾向があります。日本の工場が参考にすべきは数字の大きさではなく、AIを使う業務シーンを棚卸しして比率で管理するという進め方です。

日系自動車メーカーの中国工場については、トヨタ中国が华为・Momenta・小米とAIエコシステムを作っていることは公表されていますが、工場AIの具体的な内容は開示されていません。日系工場の公開情報は中国の日系工場とAIで整理しています。

よくある質問

中国のEV工場ではヒューマノイドが本格稼働しているのですか

組立・品質管理の工程に組み込んだ事例と受注は公表されていますが、稼働台数や稼働時間の詳細はほとんど開示されていません。量産出荷は始まっていますが、工程を置き換える規模での稼働かどうかは確認できていません。

「AI応用シーン比率」はどう数えるのですか

工場の業務シーン(検査、計画、保全など)のうち、AIを使っているシーンの割合です。認定の申請資料で使われる指標で、シーンの定義や粒度は企業ごとに異なります。

日系企業の中国工場も認定制度の対象になりますか

認定は中国国内の工場が対象で、外資系の工場も申請しています。日系工場が申請する場合は、データの越境規制や生成AIの備案など、中国の規制との関係も確認が必要です。

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この特集について

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。