比較の前に:製品は3つの型に分かれる

予知保全AIの製品は、状態監視の国際規格ISO 13374が定める6つの機能ブロック(データ取得からデータ処理、状態検知、健全性評価、予後評価、保全推奨まで)のうち、どこを担うかで大きく3つの型に分かれます。

  1. センサ込みサービス型:センサ・通信・分析を一体で提供する。導入が速い反面、他社データの取り込みや自社での調整に制約があることが多い
  2. 分析ソフト・基盤型:既存のセンサやヒストリアンのデータを使って分析する。データ取得の仕組みがある工場向け
  3. 制御機器・保全システム組込み型:インバータやPLC、保全管理システム(CMMS)に分析機能を組み込む。既存機器との親和性が高い

型が違う製品を同じ表で比べると、得意分野の違いが見えにくくなります。まず自社がどの型を求めているかを決め、そのうえで次の8軸で比べてください。構成の考え方は予知保全システムの構成で詳しく扱っています。

確認すべき8つの比較軸

#比較軸確認する内容
1提供範囲センサ・エッジ・分析・保全推奨のどこまでを含むか
2対象設備と故障モード回転機中心か、プロセス設備・工作機械にも対応するか
3使う信号振動・電流・音・温度・画像など、どの信号を使うか
4他社データの取り込み既存センサ、ヒストリアン、PLCのデータを使えるか
5誤報への対応閾値調整や再学習を自社でできるか、ベンダー依頼か
6診断の深さ異常検知のみか、故障部位の診断や推奨まで出すか
7保全業務との連携CMMSやMESの作業指示に連携できるか、生成AIの支援があるか
8データの持ち方データの保存先、取り出しの形式、契約終了時の扱い

8軸のうち、カタログで比べやすいのは1〜3ですが、導入後の満足度を左右するのは5、7、8です。誤報が出たときに自社で直せるか、アラームが作業指示につながるか、データを自社で持てるかは、デモや提案書では見えにくいため、必ず個別に質問してください。

主要製品を8軸で並べる

以下は、各社の公式発表や報道で確認できた範囲の整理です。表の空欄や「要確認」は、公開情報で確認できなかったことを示し、機能がないという意味ではありません。成果の数値はいずれもベンダーまたは顧客の発表です。

製品型主な信号特徴(公開情報)誤報対応・データの持ち方
Augury(米国)センサ込みサービス型振動・温度など予知保全モニタリングと役割別AIエージェントからなる「Industrial AI Workforce」を提供。170社超の製造業、Fortune 500の20社超が利用(同社発表)要確認
Siemens Senseye(独)分析ソフト型既存データを活用旧Senseye社は完全にSiemens製品に統合。生成AIの「Maintenance Copilot」をEntry/Scaleの2パッケージで提供(2025年3月)要確認
Rockwell GuardianAI(米国)制御機器組込み型インバータの電気信号同社のPowerFlexドライブの電気信号から、ミスアライメント・アンバランス・緩み・軸受故障などを早期警告。ノーコードでエッジ稼働。日本で2024年7月に一般提供同社ドライブとの連携が前提
MaintainX(米国)保全システム組込み型CMMSのデータAIによるトラブルシュート・異常検知・部品予測を備えたCMMS。1.4万社超が利用(同社発表)要確認
NEC インバリアント分析(日本)分析ソフト型プラント・ラインのセンサ群多数のセンサ間の関係から「いつもと違う」を検知する故障予兆AI要確認
エイシング(日本)組込み型振動などマイコンに載る異常検知・制御AIアルゴリズム。振動データからベルトコンベアの異常を検知しPLCやシグナルタワーに通知するデモをアイ・エル・シーと共同開発要確認
LiLz(日本)センサ込みサービス型画像(アナログメータ)無線IoTカメラとAIでアナログメータを遠隔で自動読み取り。2026年8月にダイキン工業が出資要確認
KELK(日本、コマツ子会社)センサ込み型振動温度差3℃で自己発電しLoRaで約500m送る振動センサと、オンプレの解析ソフトオンプレ解析

Siemens Senseyeについては、Maintenance Copilotのパイロットで事後保全の時間が平均25%短縮したと同社が発表しています。この数字はセンサによる故障予知の効果ではなく、生成AIで診断材料を探す時間の短縮に関するものです。中身は保全業務の生成AIで解説しています。

欧米ベンダーの詳しい比較は欧米の予知保全AIベンダー9社比較も参照してください。

型ごとの向き・不向き

センサ込みサービス型は、センサの設置からクラウドでの分析までを短期間で始められるため、データ基盤がまだない工場や、まず1ラインで効果を確かめたい工場に向いています。一方、他社のセンサや既存のヒストリアンのデータを一緒に分析できるか、契約を終えたときにデータを持ち出せるかは、製品ごとに確認が必要です。

分析ソフト・基盤型は、すでにセンサやヒストリアンがあり、データを活かしたい工場に向いています。ただし、データの品質(サンプリング周期、圧縮設定、設備IDの整合)が分析の精度を左右するため、データの前処理に手間がかかることがあります。

制御機器・保全システム組込み型は、既存の機器や業務システムとの親和性が高く、アラームを作業指示につなげやすいのが利点です。反面、特定メーカーの機器が前提になることが多く、複数メーカーの設備が混在する工場では、設備ごとに別の仕組みが必要になります。

よくある質問

海外製品と国内製品で、選ぶときの違いはありますか?

海外製品は機能の更新が早く、生成AIなどの新機能が先に入る傾向があります。国内製品は日本語のサポートや現場への導入支援、国内の設備メーカーとの連携で有利なことがあります。どちらを選ぶ場合も、日本でのサポート体制と、データの保存場所は確認してください。

複数の製品を組み合わせてもよいですか?

組み合わせは一般的です。回転機はセンサ込みサービス、電動機は制御機器組込み型、プロセス設備は分析ソフト型と使い分けることもあります。その場合は、アラームを1つの保全システムに集約し、作業指示と記録を一元化することが重要です。

価格はどのくらいですか?

多くの製品は価格を公開しておらず、設備台数やセンサの数、契約期間で見積もりになります。比較するときは、初期費用だけでなく、3年間の総費用(月額・センサの電池交換・保守)で比べてください。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。