ApolloとMercedes-Benzの経緯

Apptronikは米テキサス州のヒューマノイド企業で、製造・倉庫・小売向けの汎用ヒューマノイド「Apollo」を開発しています。公式サイトでは、パートナーとしてGoogle DeepMind、NVIDIA、GXO、Mercedes-Benz、Jabilを挙げています。

時期出来事出典
2024年3月Mercedes-BenzがApolloを自社製造拠点で試験導入する契約を締結。「低スキルで身体的にきつい手作業」の自動化が狙い。台数は非公表TechCrunch
2025年Series A 4億300万ドル。Mercedes-Benzが出資(Googleなども参加)。Apolloは組立キットの配送や部品検査などのタスクで試験中Mercedes-Benz側の法律事務所の発表
2025年3月GTC 2025でMercedes-BenzがApolloによる車両組立をNVIDIA Omniverse上でシミュレーションしていると発表NVIDIA
2026年2月5億2,000万ドルのSeries A-X延長を調達。Series A累計9億3,500万ドル超、評価額50億ドル超と報道Runtime Wire

Google DeepMindは、Gemini Roboticsの研究パートナーとしてApptronikを挙げています。モデルはGoogle DeepMind、演算とシミュレーションはNVIDIA、実証の場はMercedes-BenzとGXO、製造はJabilという分担が見えます。

Series Aの累計調達額
9億3,500万ドル超
Runtime Wire(2026年6月)
報道された評価額
50億ドル超
同上
Mercedes-Benzでの試験台数
非公表
TechCrunch(2024年3月)

「パイロット段階」と評される理由

Runtime Wire(2026年6月)は、Mercedes-Benzでの取り組みを「パイロットの実証段階であり、スケール展開ではない」と評しています。大型調達が続いても段階が変わらない理由は、公開情報から次のように整理できます。

  1. 台数と作業範囲が開示されていない。量産ラインに何台が常駐し、何の作業をどれだけ担っているかが分からない
  2. タスクが補助的な作業にとどまる。組立キットの配送や部品検査は、ライン本体の組立作業ではなく周辺の作業
  3. 経済性の評価が公開されていない。人の作業や専用の搬送機器と比べた費用対効果の情報がない

資金調達は将来の量産と開発のための資金で、工場での実績の大きさを示すものではありません。投資家の評価と工場の導入判断は、別の物差しで測る必要があります。

資金規模と工場展開の段階を分けて読む

ヒューマノイドの評価では、資金調達のニュースと工場での段階を混同しないことが重要です。

縦軸を資金調達規模、横軸を工場展開の段階として、Apolloが資金規模は大きいが展開はパイロット段階にあることを示す図 試験・パイロット限定的な商用量産ライン常駐 工場展開の段階(公開情報ベース) 資金調達規模 Apollo9億ドル超 この領域で台数・稼働率を開示した例はまだ少ない
資金調達の規模と工場展開の段階は別の軸。Apolloは資金規模が大きいが、工場展開はパイロットにある。

工場の導入担当者が見るべきなのは、資金規模ではなく、作業の種類、台数、稼働率、人の介入頻度、そして安全の扱いです。ヒューマノイド全体の状況はヒューマノイドの工場実証一覧、欧米企業の資金調達の流れは欧米ヒューマノイドの資金調達にまとめています。

Mercedes-Benzの進め方から学べること

一方で、Mercedes-Benzの進め方には参考になる点もあります。実機の試験と並行して、NVIDIA Omniverse上で車両組立へのApollo投入をシミュレーションしている点です。実機を量産ラインに入れる前に、デジタルツイン上で動線、干渉、タクトへの影響を検証できます。

このシミュレーションの精度は、工場のCADデータ、設備配置、工程の標準時間、部品の流れといったデータの整備度に左右されます。MESに標準時間や工程順序が整理されていれば、それをシミュレーションの入力に使えます。逆に、これらが紙や個人のExcelに散らばっている工場では、デジタルツインを作る段階で大きな工数がかかります。

よくある質問

ApolloはMercedes-Benzの量産ラインで使われていますか

公開情報では、組立キットの配送や部品検査などのタスクでの試験段階とされ、台数は公表されていません。量産ラインに常駐しているとは確認できません。

Apptronikは日本で導入できますか

本記事の調査では、日本での提供条件を一次情報で確認できていません。個別に問い合わせる必要があります。

資金調達額が大きい企業の方が信頼できますか

資金力は開発と供給の継続性の目安にはなりますが、工場での実績を示すものではありません。導入判断は自社の作業での実測値と、保守体制で行うべきです。

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この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。