予測は「何が起きるか」、最適化は「どうするか」
予測AIは、過去のデータから将来の値や現在の見えない値を推定します。来月の需要、設備の故障の兆候、この条件で作ったときの不良率などが出力です。数理最適化は、目的(コスト最小、納期遅れ最小など)と制約(設備能力、段取り、資材)を数式で書き、最もよい打ち手を探します。どの品目をどの設備でいつ作るか、どの加工条件にするかが出力です。
| 観点 | 予測AI(機械学習) | 数理最適化 |
|---|---|---|
| 答える問い | 何が起きるか、いくつになるか | どうすれば一番よいか |
| 入力 | 過去の実績データ | 目的関数、制約条件、パラメータ |
| 主な手法 | 勾配ブースティング、ニューラルネット、時系列モデル | 混合整数計画(MIP)、制約プログラミング(CP)、メタヒューリスティクス |
| 評価 | 予測誤差(実績との差) | 目的関数の値、制約違反の有無、計算時間 |
| データがないと | 作れない | 条件を数式にできれば解ける |
| 典型的な失敗 | 過去と違う状況で外れる | 現場の暗黙の制約を書き漏らす |
最適化は「AI」と呼ばれないこともありますが、生産計画の中核技術は今も最適化です。機械学習で計画を直接作る研究(深層強化学習)も進んでいますが、2024年6月のサーベイ論文では、学習した方策の最適性ギャップは静的なジョブショップ問題で約6〜20%で、上位のヒューリスティクスにはまだ及ばないとされています。
組み合わせる3つの型
製造業で予測と最適化を組み合わせる方法は、大きく3つの型に分けられます。
型1:予測の出力を最適化に渡す(直列)
もっとも一般的な形です。需要予測の結果を生産計画の最適化に入れ、計画を作ります。注意点は、予測の誤差が計画にそのまま伝わることです。点の予測だけでなく予測の幅(予測区間)を渡し、安全在庫や計画の余裕に反映させると、予測が外れたときの影響を抑えられます。
日立製作所が2023年5月に発表した日立ハイテクの半導体製造装置の事例では、制約プログラミング技術で生産計画を自動立案し、月最長5日かかっていた立案作業を月1日以内にしたとされます(日立発表)。計画の中核は最適化で、受注などの入力はSAP S/4HANAとの連携で受け取っています。
型2:最適化の中で予測モデルを使う(埋め込み)
最適化の制約や目的の中に、予測モデルの出力を使う形です。例えば段取り替えの時間を品目の組み合わせごとに予測し、その値を使って段取り順序を最適化します。標準時間の代わりにMESの実績から学習した実加工時間の予測を使えば、計画が現実に近づきます。予測モデルが間違えると最適化の答えも歪むため、予測の精度を品目ごとに確認しておく必要があります。
型3:予測と実験を繰り返す(ベイズ最適化)
加工条件や配合の条件出しでは、評価に実験や試作が必要で、何百回も試せません。ベイズ最適化は、少ない実験結果から「この条件ならどうなるか」を予測する代理モデルを作り、次に試すべき条件を提案します。実験結果でモデルを更新し、これを繰り返します。
2024年11月の射出成形の研究では、単目的の条件出しをベイズ手法で行うと16実験で済み、中心複合計画ベースの31実験からほぼ半減しました。同じ研究では、別の手法が樹脂の焼けにつながる高すぎるバレル温度を提案したのに対し、ベイズ手法は安全な範囲に保ったと報告されています。
どちらを使うかの判断基準
計画領域の詳細は生産スケジューリングAIのガイド、条件出しはベイズ最適化による条件出しで扱っています。
よくある質問
数理最適化はAIに含まれますか
定義によります。機械学習だけをAIと呼ぶ立場では含まれませんが、製造業の「計画AI」「最適化AI」と呼ばれる製品の多くは、中核に数理最適化や制約プログラミングを使っています。製品を比べるときは、何を予測し、何を最適化しているのかを分けて確認してください。
強化学習で生産計画を作れますか
研究は進んでいますが、静的なスケジューリングでは最適化ソルバーにまだ及ばないとする報告が多いです。大規模で頻繁な再計画が必要な場面で検討する段階で、まず制約プログラミングや混合整数計画で解ける規模かを確認します。
ベイズ最適化には何回くらいの実験が必要ですか
初期実験として5〜10点程度を実施し、その後1回ずつ提案と実験を繰り返すのが一般的です。必要な総回数は変数の数と目的の数で変わり、公開研究では十数回から数十回で最良条件に近づいた例が報告されています。
- 日立ハイテクの半導体製造装置における生産計画の自動立案(日立製作所, 2023年5月24日)
- Graph Neural Networks for Job Shop Scheduling Problems: A Survey(Smit et al., arXiv 2406.14096, 2024年6月21日)
- Single and multi-objective real-time optimisation of an industrial injection moulding process(Kariminejad et al., 2024年)
- High-Dimensional Materials and Process Optimization(Ling et al., arXiv 1704.07423, 2017年)
- Bayesian reaction optimization as a tool for chemical synthesis(Shields et al., Nature 590, 2021年2月)
