配置計画は「制約付きの組合せ問題」

工場の人員配置は、誰がどの工程を担当できるか(スキル)、誰が出勤しているか(勤怠)、どの工程に何人必要か(生産計画)、誰を育てたいか(教育計画)という条件を同時に満たす組合せを探す作業です。工程が10、作業者が30人いれば組合せの数は膨大になり、班長は経験で「いつもの形」を基準に調整しています。

この作業をAIや数理最適化で支援すると、条件を満たす配置案を数秒で出せます。班長は案を確認し、現場の事情で微調整するだけになります。配置計画は、AIの中でも機械学習より数理最適化(制約を満たす中で最も良い解を探す手法)が中心になる分野です。生産スケジューリングと同じ考え方で、CP-SATソルバーによるスケジューリングと共通する部分が多くあります。

公表事例:配置計画の業務時間を約70%削減

大阪のフツパーは、人員配置を最適化するAI「スキルパズル」を提供しています。同社の公式サイトでは、計画作成時間を約90%削減できるとしているほか、導入事例として次の2つを挙げています。

トヨタモビリティパーツ茨城支社の配置計画の業務時間削減
約70%
フツパー公式サイト(同社発表)
ロート製薬の再生医療DXでの工数削減
約75%
フツパー公式サイト(同社発表)
スキルパズルの計画作成時間削減(製品紹介)
約90%
フツパー公式サイト(同社発表)

いずれもベンダーの自己申告で、対象人数、工程数、比較の基準(導入前に誰が何時間かけていたか)は公開されていません。70%という数字を自社にそのまま当てはめることはできませんが、配置計画のように毎日繰り返す定型の判断業務では、時間の削減効果が出やすいことは読み取れます。

前提はスキルデータの鮮度

配置計画のAIは、入力するスキルデータが正しいことを前提にしています。多くの工場のスキルマップは表計算ファイルで、年に1〜2回の面談で更新されます。これでは、先月認定を取った新人がスキルなしのまま扱われたり、半年以上その工程に就いていない人がスキルありのまま残ったりします。古いスキルデータで最適化すると、実際には任せられない人を配置した案が出てきます。

スキルデータの鮮度を保つ方法は2つあります。

  1. 認定・教育の記録を即時に反映する:作業認定や教育修了をシステムに登録した時点で、スキルマップを更新する
  2. 作業実績から経験を集計する:MESの作業実績(誰が、いつ、どの工程を、何時間担当したか)から、工程ごとの直近の経験回数を自動で集計する

2つ目を入れると、「認定は持っているが半年以上その工程に就いていない」人を検出でき、配置の際にブランクを考慮できます。

認定記録とMES作業実績でスキルマップを更新し、勤怠と生産計画を合わせて最適化エンジンが配置案を出し、班長が確定した配置が作業実績に戻る流れ 作業認定・教育記録 MES 作業実績 スキルマップ認定+直近経験 勤怠・シフト 生産計画・必要人数 最適化エンジン配置案の生成 班長が確認微調整して確定 確定した配置で作業し、実績がスキルマップに戻る
配置計画AIのデータの流れ。スキルマップをMESの作業実績と認定記録で更新する。

必要なデータと決めておくルール

配置計画AIに必要なデータは次のとおりです。

データ中身取り先の例
作業者マスタ社員番号、所属、雇用区分人事システム
スキルマップ工程ごとの認定レベル、取得日教育記録、スキル管理表
直近の経験工程ごとの最終担当日、経験回数MESの作業実績
勤怠出勤予定、休暇、残業上限勤怠システム
必要人数工程ごと・時間帯ごとの必要人数とスキル水準生産計画、標準作業
配置ルール連続配置の上限、ペアにしない組合せ、育成枠班長の経験則を文書化

最後の配置ルールが、最も手間のかかる部分です。「新人は熟練者の隣に置く」「重い工程は連続2日まで」「AさんとBさんは同じ班にしない」といった班長の経験則を聞き取り、制約として書き出します。ここが漏れると、AIの配置案は条件を満たしていても現場で使えないものになります。生産計画担当の暗黙のルールを書き出す方法は計画担当者の暗黙ルールを形式化すると共通です。

効果の測り方と、時間以外の効果

配置計画のAI化の効果は、計画作成にかかる時間だけで測ると、班長の負担が減ったことしか見えません。あわせて次の指標も見ておくと、導入の価値を説明しやすくなります。

  • 欠勤や増産が出たときに、配置を組み直して確定するまでの時間
  • 多能工化の進み具合(1人あたりの担当可能工程数の推移)
  • 特定の人への負荷の偏り(同じ人が重い工程に連続で配置された回数)
  • 配置ミスによる品質不良や手戻りの件数

特に多能工化は、配置計画に育成枠を制約として入れることで、計画的に進められるようになります。班長の経験に頼った配置では、忙しい時期ほど慣れた人を慣れた工程に置きがちで、育成が後回しになります。AIで配置案を作るときに「今月はこの人をこの工程で育てる」という条件を入れておけば、育成と生産の両立を数字で管理できます。

よくある質問

小規模な工場でも配置計画のAI化は必要ですか

作業者が10人程度で工程も少なければ、班長の頭の中で十分に組めます。効果が出やすいのは、工程と作業者が多く、欠勤や増産で毎日配置が変わる職場です。

スキルマップの評価基準はどう決めればよいですか

工程ごとに「指導を受けながらできる」「単独でできる」「人に教えられる」程度の3〜4段階にし、各段階の判定基準を文書にします。基準が曖昧だと、班長ごとに評価がぶれ、配置の精度に影響します。

この記事に出てくる用語

用語集(日・英・中)をすべて見る

この記事を書いた人

株式会社サオス

株式会社サオス 製造DX部

DELMIA Apriso を中核とした MES / 製造DX の導入・運用・人材育成と、製造業向けAIの調査・開発・教育を手がけるITコンサルティング企業。ISO 9001:2015 / ISO 27001:2022 認証取得。 日本・中国・米国で製造業のMES・データ基盤・AI導入を手がけた実務者が、欧米・中国の一次情報にあたって書いています。